高校生に人気の高い保育者(幼稚園教諭、保育士の総称)の仕事。子どもと関わる幼稚園教諭と保育士の仕事について、幼稚園教諭、子ども園園長の経験があり、現在は保育者養成校で教鞭をとる鈴木晶子先生に幼稚園教諭・保育士の仕事をさまざまな角度から聞いてみた。

 

――給与が低いと聞きますが、実際はどうですか?

幼稚園教諭と保育士だと幼稚園教諭の方が給与が高いイメージがありますが、一概には言えません。また、国立、公立、私立かによっても異なりますし、一般企業と同じく、大卒、短大卒、専門学校卒かでも異なります。

ただ保育士に関していえば、深刻な保育士不足を解消すべく、国をあげて待遇の改善が進んできており、大卒保育士の場合は、一般企業の大卒者の初任給とほぼ同程度になっているといわれています。

また、これまでは一般企業のようなキャリアアップという概念があまりなく、主任や園長に昇格するくらいでしたが、2017年に保育士の待遇向上を目的に設定された『保育士等キャリアアップ研修制度』で研修を受けることで、キャリアや給与がアップするようになりました。

子どもはいるけど先生がいなくて継続できない保育園が出るほど保育士不足は深刻です。こうした現状をうけ、保育園や認定こども園は少しずつ待遇改善が進んできている印象があります。

知らない人も多いかもしれませんが、幼稚園教諭は「先生」なので、学校教育と同様に残業代がつかないところも多いです。これは、幼稚園教諭やこども園園長を経験した私の印象ですが、幼稚園はまだ保育園ほど待遇の改善が進んでいないような気がしています。

――どんな理由で辞める人が多いですか?

給与よりも意外に多いのが「人間関係」です。逆に、給与が安くても人間関係がよいから続けられるという人もたくさんいます。

新しい保育を取り入れず、昔ながらのやり方を変えることのできない園は若手が辞めてしまう傾向があります。

――幼稚園教諭と保育士、転職に有利なのはどっちですか? また、働きやすいのはどちらですか?

保育士資格は、保育園の募集が増えていることに加え、児童養護施設や乳児院、障害者施設などいろいろな施設で働けるというメリットがあります。実際に実習やボランティア、インターンシップなどに行って、自分の目でリサーチして選ぶことが大切です。

どちらが有利というよりは、辞める理由にもあったように、働きやすい園は人間関係が重要です。

実際に見学してみると、若手の先生が園長先生と笑顔であいさつをしているかなど、ほんのちょっとした行動からも園の人間関係が透けて見えたりします。トップダウンより、若手の先生たちの意見を聞いてくれるボトムアップの園がおすすめです。

もちろん、結婚して辞めてしまう人もいますが、いまは産休・育休をとって復帰する人も少なくありません。辞めてしまったとしても、保育士は資格職。パートでも時給がよいため戻ってくる人も多いです。

――男性の保育者は増えていますか?

正直、男性の幼稚園教諭はまだ少ないように思いますが、男性保育士は増えています。実際、幼稚園実習は、男性は断られることが多い印象があります。

男性保育士はひとりでおむつ替えをしないなど気をつけるべきことはありますが、子どもはへとへとになるまで遊びに付き合ってくれる男性保育士と遊ぶ方が楽しそうだったりします。

本来、子育てにジェンダーは関係ありませんし、今後も男性保育士は増えていくと思います。また、新しいことを取り入れている園の方が男性が多い印象です。

 

鈴木晶子 すずき・あきこ 幼稚園教諭、子ども園園長を経て、現在は保育者養成校の短大・専門学校で教鞭をとる。現場での経験から、保育者のストレスケアの研究も行い、保育者を対象としたヨガ教室「Yoga Laboratory ~ 先生達のセルフケア研究会 ~」の立ち上げも行う。保育園・保育士支援雑誌「MiRAKUU(ミラクウ)」のWEBでコラムの連載を担当。

 

★「MiRAKUU」とは

「MiRAKUU」とは、未来+保育+LIKE(好き)を表す言葉で、保育の仕事が大好きな人財を増やし、保育の未来をより良い環境にしていくことを目的とした、保育園・保育士支援雑誌。首都圏にある保育園・幼稚園・保育科のある大学で配付。

・保育士・学生向けサイト:MiRAKUU

・園の施設長向けサイト:MiRAKUUぷれみあむ