テレビドラマや映画でも、よくテーマとなる警察官という仕事。皆さんは、取り調べをしたり殺人事件を捜査したりすることだけが、警察官の仕事だと思っていませんか。警察官である父に、リアルにどのような仕事をしているのか、インタビューしました。(高校生記者・ゆきんこ=2年)
住民が安心して住める街を目指して
―仕事内容を教えて!
みんなが安心して暮らせるまちをつくるために、治安を守っているよ。
具体的に言うと、安全安心のまちづくりのために、パトロールや交通指導取り締まりなどをする。また、犯罪抑止、交通事故抑止活動なども行っているよ。
―どこで、だれと仕事をしているの?
警察署管内の駐在所員として活動しているから、基本的には1人で仕事をしてるよ。
駐在所というのは、家と交番がくっついているようなもので、家族と住む場合もあるけど、私は1人で赴任しているよ。広い家で意外と快適。寂しいけど(笑)
駐在所員でない場合は、交番に交代制で勤務する制服警察官、ドラマでよく見るような犯罪捜査をする刑事、災害救助などを行う機動隊員などがいる。本当にさまざまな勤務形態があるんだ。
―1日の流れを教えて。
まず、朝、「巡回連絡」というものをする。
これは交番勤務の警察官もすることだよ。駐在所は日勤だけど、交番は24時間勤務であるという違いがあるだけだからね。
巡回連絡というのは、地域の家を一軒一軒回って、誰が住んでいるのかの確認をすること。巡回連絡をする理由は、災害時に情報を活用するためだよ。その後の日中の勤務としては、交通指導取り締まりをしてるかな。
「警ら活動」もする。これは、一般的に言うパトロールのこと。管内の地域をパトカーで回るんだ。主にこれらが駐在所員の仕事かな。
海外ドラマの刑事に憧れて
―この仕事を目指し始めたのはいつ? ほかに迷った仕事はあった?
18歳のときかな。高校を卒業して、1年間いろんな仕事を経験したよ。
その後、試験を受けて、消防士と裁判所職員と警察官に受かったんだ。自分が一番ワクワクするような仕事を選ぼうと思い、警察官を志したよ。
―目指そうと思ったきっかけは何?
自分が育ってきたふるさとの治安を守りたいという理由と、海外ドラマのかっこいい刑事に憧れて志望した。
拳銃を撃ってみたかったという理由も大きいかな(笑)。警察官は公務員なので、生活の安定感があるのも魅力のひとつだったよ。
―警察学校ではどんなことを学んだ?
警察官として活動するための法律を学んだ。規律の大切さ、体力的な訓練、仲間との絆なども学んだよ。
監獄のような環境だったけど、今思うと良い経験だったなと思う。木村拓哉さん主演のドラマ「教場」では、その警察学校の姿がリアルに映し出されているから、ぜひ見てみてほしい。
犯罪者を捕まえた時の達成感
―この仕事のやりがいを感じる瞬間は?
一番のやりがいは、犯罪者を捕まえたときの達成感が素晴らしいところ。
被害者のために犯罪者を捕まえたときは、自分の気持ちも被害者と同じで、憎しみやつらさが連動しているので、一気にスッキリするんだ。
最近の事件では、自転車泥棒を見つけ出して捕まえたとき。被害者の方がすごく喜んでいらして、自分までなんだかうれしくなっちゃったよ。
―この仕事の大変なところはどんなところ?
次から次へと事件が起きるので、ひとつひとつ解決していってもキリがないところ。この職は忍耐との戦いだからね。私は、犯罪行為というものは、無くなることはないと思ってる。だからこそ、私たち警察官がより安全な社会を目指して仕事をしてる。大変だけど、いつまでも必要な仕事だと思うよ。
―この仕事に向いているのはどんな人?
粛々と真面目に仕事に向き合える人。途中で仕事を放り投げることは許されないよ。
一つ一つの仕事をちゃんとクリアしていけるような、努力家の人が向いている。
語学、体力、礼儀…幅広い知識が役立つ
―この仕事は将来、どんなふうに変わっていくと思う?
他の事務作業のように、AIやロボットにこれから任せていくような仕事ではない。人間の犯罪行為を人間以外が取り締まることはできないと思うからね。
ずっとこのままか、日本の人口減少に伴って外国人警察官が多くのまちで見られるようになるかもしれないね。
―この仕事を目指す人が今やっておいたほうがよいことは?
まずは、勉強全般。特に外国語が話せるとすごく役に立つと思うよ。
英語だけでなく、ベトナム語やフィリピン語、中国語などのアジア系の言語やヨーロッパ系の言語は、外国人犯罪者がいると、役に立つよ。
次に、礼節をきちんとすること。聞き込みなど、地域の人と接する際に礼儀は必須。
また、体力があった方がいいので、運動はしておいた方がいいと思うよ。してなくても、警察学校でしごかれるけどね(笑)
そして、これからはパソコンの技術がとても重要になってくる。これからはパソコンのソフトをある程度使うことができないと、社会で役に立たないからね。あといろんな知識を持っておいた方がいい。車の名前を聞いてすぐに形が分かるとか。いろんな角度から物事を見る視点が大事だと思うよ。
走りながらの射撃は「ドラマならでは」
―ドラマなどのイメージと現実との違いはどんなところ?
犯人を捕まえたとき、ドラマでは夜に飲み会や打ち上げをしたりするけど、実際は書類を作るのが大変でそんな余裕はない。当日の夜が一番忙しいんだ。
あと、刑事ドラマで、走りながらだったり車の中からだったり、変な状況で拳銃を撃って犯人に命中してるけど、そんな腕があったらオリンピックで即優勝レベルだよ(笑)
私は拳銃射撃の競技会で県の代表として活動していた時期があった。だから、ドラマで拳銃を打つシーンがあると、つい注目してしまうんだけど、奇跡だなと思っていつも見ているんだ。動きながら弾を命中させるなんてとてもすごいことだよ。
【取材後記】日常を守る父の仕事、誇らしい
私は今まで、父がどんな仕事をしているのか、細かくは知りませんでした。
警察官は、ドラマで見るような殺人事件の犯人探しみたいな仕事ばかりでなく、巡回連絡のような、私たちの日常を守るような仕事もたくさんしてくれているんだな。父を含む警察官の方々に感謝の気持ちが湧きました。
警察官の皆さん、いつも私たちの生活を安全に守ってくれてありがとうございます。大変な仕事だとは思いますが、今までもこれからも大事な仕事です。そんな仕事をしている父を誇らしく感じたし、私も将来、こんなふうに社会に貢献できたらいいなと思います。