高校生に人気の職業のひとつ「薬剤師」。「調剤薬局で働いている人」といったイメージをもつ人が大半かもしれないが、実際の活躍の場は幅広い。詳しく見ていこう。
(野口涼)

薬剤師と医薬品の関係

まずは薬剤師の仕事と関わりの深い「医薬品」について説明しよう。医薬品には医師が患者の症状に合わせて処方する「医療用」と、薬局やドラッグストア、一部はインターネット通販などでも買える「一般用」に大きく分かれる。このうち大衆薬ともいわれる「一般用医薬品」は、副作用のリスクが比較的少ないとされる第二類、第三類医薬品であれば、薬剤師の資格がなくても販売することができる。
 一方、「医療用」の薬を調剤できるのは原則的に薬剤師のみだ。調剤には病院内で行う「院内調剤」と病院外の調剤薬局で行う「院外調剤」とがある。医師には診療・処方を、調剤については薬剤師に任せるといった医薬分業が推進された結果、現在では院外調剤が6割を超える。また、最近では調剤薬局を併設する薬局やドラッグストアも多い。(図1)

調剤…医師の処方箋をもとに処方薬を確認・調剤し、患者に説明すること。

 

 

幅広い活躍の場をもつ薬剤師の仕事とは

 

厚生労働省による平成24年12月現在における全国の薬剤師数は28万52人。このうち薬局の従事者は15万3012人で、全体の54.6%にあたる。
 次いで多いのが病院・診療所の従事者の5万2704人で18.8%。なかでも存在感を増しているのが「チーム医療」の一端を担う薬剤師だ。医師や看護師、管理栄養士らと連携し、薬の専門家として患者の治療にあたる。最近では病棟に常駐する薬剤師も多くなっている。
 また、がん、感染制御、精神科、妊婦・授乳婦、HIV感染症の5つの領域では「専門薬剤師」の認定制度があり、薬剤師にとってキャリアパスのひとつとなっている。
 この他、医薬品関係企業(16.1%)や大学(1.9%)で新薬の開発や改良などに携わる薬剤師も少なくない。さらに保健所や厚生労働省といった行政機関で働く薬剤師もいるなど(2.3%)、活躍の場は多彩に広がっている。(図2)

 

薬剤師になるには

薬剤師になるには6年制課程の薬学部を卒業し、薬剤師国家試験に合格する必要がある。2014年3月に実施された薬剤師国家試験では、受験者数1万2019人のうち7312人が合格。合格率は60.84%となった。
 薬学部では、有機化学や無機化学など化合物に関する知識をはじめ、体内での薬の作用、さらには病気やその治療についても学ぶ。これらの知識・技能の他にも、薬剤師には強い倫理観と人間性、チーム医療を円滑に実践するコミュニケーション能力が求められるのはいうまでもないだろう。
 なお、薬学部には研究者の養成を目指す4年制の学科もある。こちらは卒業するだけでは薬剤師の受験資格は得られないので注意が必要だ。