昨年度全国大会出場が決まった瞬間はうれし泣きする部員もいた。「埼玉県の男声合唱団にとっては激戦の、全日本合唱コンクールで全国に行きたい」(金谷君)

小松原高校音楽部は、昨年秋の「NHK全国学校音楽コンクール全国大会」に初出場。参加校で唯一の男声合唱をホールに響かせた。歌うことが好きな男子が集まり、のびのびと合唱を楽しんでいる。(文・写真 野口涼)

中学では歌えなかった

取材した日は、2・3年生46人が新入生に披露するためにゴールデンボンバーの「女々しくて」などの曲を練習。明るく若々しい歌声を響かせていた。練習の合間に、男子校らしいやんちゃな顔が見え隠れする。

ほとんどの部員が音楽経験なしで入部する。「みんな楽譜も読めません。最初は不安ですが、夏休み前には読めるようになります」と話すのは部長の金尾将希君(3年)だ。

たいていの中学では合唱部はもちろん、音楽の選択授業も女子がほとんど。“歌う楽しさ”を味わう機会がなかった男子たちが、ここでは水を得た魚のように生き生きと歌っている。

有志5人のアカペラが原点

11年前、歌の好きな生徒5人が昼休みに音楽室に集まり、ゴスペラーズの真似をして遊び始めた。「なかなかうまくて、私も一緒になって歌ったりしていました」。音楽科教諭で顧問の

蛭田光仁先生はそう振り返る。

5人が文化祭でアカペラを披露したのをきっかけに仲間が増え、翌年から音楽部として始動。部員が30人を超えた4年目に男声合唱団を始めた。「音楽を純粋に楽しむことから自然発生的に生まれた部活。ハモる楽しさを知っているから、がんばって練習する。その雰囲気はいまも全く変わっていません」と蛭間先生は話す。

橋本翔一君(3年)は学校説明会で音楽部のハレルヤコーラスを聞き、「男声合唱ってかっこいい」と感じて入部した。「本当にうまく歌えたときは、体が震えるくらい感動する。その気持ちよさを追求しています」

この春は合唱の名門といわれる中学校から数人が「音楽部に入りたい」と入学。「中学では混声合唱だったが、男子だけでのびのび歌いたい」(宇木友哉君・1年)、「インパクトの強さが男声合唱の魅力。楽しく歌うために実力をつけたい」(高向梢太君・1年)と意気込んでいる。

目指すのは響きの揃った雑味のない合唱。「中学までの自分では考えられないほどがんばっています」と茶谷力輝君(3年)は語る。コンクールでの評価にもつながれば最高だ。

「女々しくて」ではキレのあるダンスも披露