永岡亜美さんの弁論原稿「彩りあるカラフルな世界に」

みなさんは、大切にされていますか。そして、未来に希望を持っていますか。

ちょうど一年前のことでした。「好きな人ができたから相談にのってほしいんだけど」友達のいつにない真剣な表情が気になりましたが、「まかせて」とつい調子よく返事をしました。「実は、好きになった人が同性で、自分が同性が好きだということが知れたら、みんな離れていってしまうかもしれん。偏見の目で見られるのが怖い、どうしたらいい」というのです。私は何も応えることができませんでした。

その時から、わたしの悩みははじまりました。偏見で見る人はいないから大丈夫といった方がよかったのだろうか、告白をするのはやめた方がいいといった方がよかったのだろうか。 わたしがどう思うかをだけ伝えた方がよかったのだろうか。わたしははじめて直面した問題に苦しみました。

しかし、結局、何のアドバイスもできないうちに、友達は、告白をし、告白したことで、同性愛者であることが周りの友達の知るところとなり、そして、それがきっかけであったのか、休むことが多くなりました。そして、友だちは、自分らしくありのままに生きるために、学校をやめるといい、別の進路を選びました。私は、友達を苦しみから救いたい一心で、涙ながらに説得しましたが、気持ちは変わりませんでした。

みなさんだったら、どうしますか。

現在、地球上の総人口は約77億人といわれています。77億人もの人がいれば、考え方や感じ方は人それぞれ違います。まして、生まれ育った環境、思想が違うのだから、一人ひとり違うはずです。そうした中でまず恋愛感情を抱く相手として思い浮かぶのは、女性は男性、男性は女性という人がほとんどかもしれません。しかし、中にはそうではなく、同性が好きという人もいます。同性愛者は人口の約8%、つまり、13人に1人という割合で存在するといわれています。同じ学校や学級にいてもおかしくないのです。

日本では、憲法第二十四条「両性の合意のみ結婚は成立する」と示されています。同性の結婚は認められていません。ただ好きになった相手が同性だったがために、結婚が許されなかったら…、好き同士なのに結婚が許されないのは、差別を受けているのと同じだと感じるのではないでしょうか。

わたしは、どうすることがいいのか悩み続けた末、校内弁論大会に出てたくさんの人に話してみようと思いました。同性愛者の方の思いや現状を少しでも知ってもらったら、友だちと同じように悲しい思いをする人が少なくなるのではないかと思ったのです。弁論大会では、みんなが耳を傾けて聞いてくれたと思いました。勇気を出してよかったと思ったのも束の間、わたしのそばで、「ゲイとかレズとかムリ」という声が耳に入ってきました。私は、その場にいることができませんでした。友達は、いままでどんなに傷ついてきたことでしょう。

私たちは偏見に縛られてはいないでしょうか。一人ひとりを尊重して生きることはそんなに難しいことなのでしょうか。隣の大切な人のことをちょっと考えてみたらいいのではないのでしょうか。

みんなが自由になるための一歩は、相手の立場に立って考えることではないでしょうか。相手を思いやることだと思うのです。互いに尊重し合うこと。何より、自分の立場だけを考えるのではなく、相手のことを自分のことのように大切にして、受け入れることだが一番大切だと思うのです。それは、異性でも同性でも同じ。

現在、憲法第十四条「法の下の平等」と示されているように、差別なく一人ひとりに平等権があるからこそ、好きな人と結婚する権利は個人にあるのではないか、という声が同性愛者の方々からも広がっています。去る令和元年7月21日の参議院選挙では、LGBTの候補者が自分のありのままの姿を公表し、堂々と選挙活動をされています。

声をあげて、堂々と…時代は確実に変化しつつあるのではないでしょうか。

そして今、ありのままの自分を認めることができず悩んでいるあなたに伝えたい。あなたはこの世界に一人しかいない。世界中どこを探しても同じ人間は誰一人として存在しない。だから、自分のアイデンティティを大切にし、それを自由に表現していいのだと。そしてそれは、尊重されるべきだと。

わたしたちは、お互いに尊重し合える世界、そんな彩りあるカラフルな、自由な、世界にしていかなければならないのではないでしょうか。