「好きになった人が同性」。仲の良い女子生徒から、そう打ち明けられた永岡亜美さん(島根・明誠高校3年)。何と返事をすればよいのか戸惑い、うまいアドバイスができず、友人は別の進路を選ぶことになった。友人を救えなかった。その気持ちを胸に、永岡さんは周囲の偏見の目を少しでも変えられるよう、立ち上がった。(中田宗孝)

「好きになった人が同性」カミングアウトに戸惑い

永岡さんは高1の時、友人の恋愛相談に気軽に応じてみると、レズビアンだと告げられた。友人が好きになった相手は同性だった。

友人の好きな人は女の子だった

 

想像もしていなかった友人によるカミングアウトに、永岡さんは掛ける言葉が見つからなかった。友人は「同性が好きだということが知れたら、みんな離れていってしまうかもしれん。偏見の目で見られるのが怖い……」と、不安もこぼした。

永岡さんは一人思い悩んだ。「誰かに相談できる内容でもない。偏見で見る人はいないから大丈夫…とは言えない。安易に同情したら友だちを傷つけてしまうかも。私は接し方が分からなくなってしまったんです」

友人が進路変更、後悔ぬぐえず

その後、その友人は好きになった相手に告白したことで、校内の近しい人に同性愛者であると知られることになってしまった。このことが遠因となり、別の進路に進んだ。永岡さんは友人を涙ながらに説得したが、友人の気持ちが変わることはなかった。

苦しむ友人を救えなかった後悔を抱え続けた永岡さんは、行動を起こす。「友だちを助けたかったという思いを校内の弁論大会で話してみよう」。多くの人の理解が少しでも得られるように、弁論には世界各国にはどのくらい同性愛者の方がいるのかのデータを交えた。

声届かず、自己嫌悪に

勇気を出して弁論大会で思いの丈を語り、みんなが自分の声に耳を傾けてくれたと思った。「そういう人もいるよね」と、一定の理解を示す友人が現れた一方で、「ゲイとかレズとか無理なんだよね」という生徒たちの会話が永岡さんの耳に届いた。

「その会話を聞いたとき、性格的に言い返すことのできない自分がいました。自己嫌悪に陥りました……。私は、自分のまわりの小さな世界も変えることができないんだと」

今なら戸惑わず味方だと言える

それでも永岡さんは声を発することを止めなかった。

高2のときも、同じテーマで弁論に臨んだ。今回のスピーチは、同性愛者の友人との実体験エピソードを詳しく盛り込んだ内容に変えた。

弁論を通じて個性を尊重する大切さを伝えた永岡さん(学校提供)

 

そして、「偏見に縛られず、お互いの個性を尊重し合えるような『彩りあるカラフル世界』にしていこう」と、切に主張した。彼女のスピーチは高評価を得て、全国大会「全国高校総合文化祭(2020こうち総文、WEB開催)」の弁論で紹介された。

自らの思いを伝え、永岡さんの心境は大きく変化した。「今の私なら同性愛を告げられても戸惑うことなく『私は味方だよ』って言える。周りの友だちにも世界にはいろんな個性を持った人たちがいることをきちんと伝えられます」。学校生活を送る中で、永岡さん自身が恋愛を経験したことも内面を強くした。「好きって気持ちは誰もが抱く自然な感情。恋愛対象が同性ってだけなんです」

分かってもらえる人が少しでも増えたら

別の進路に進んだ友人とは、現在もお互いの悩み相談にのる仲だ。

「友だちは一緒の学校にいたころよりも『自分らしく』います。本人も『ありのままの自分を隠すことなくオープンにできてるよ』と話してくれます」

永岡さんのスピーチを聞き、感謝の言葉とともに「分かってもらえる人が少しでも増えたらいいね」とも伝えてくれたという。

(2021年2月6日:記事内容に誤りがありましたので修正しました)