オススメの小説を高校生記者のmanamiさんに紹介してもらいました。

5人の親に育てられた高校生が主人公

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ著(文春文庫、740円=税抜)

「今」を大切にしたいと思った本。身近な人にありがとうと言いたくなった本。それが『そして、バトンは渡された』です。

『そして、バトンは渡された』瀬尾まいこ著(文春文庫、740円=税抜)

主人公の高校生、森宮優子には5人の親がいます。血のつながらない親の間をリレーされ、何度も家庭環境が変わり、そして今は20歳しか離れていない父と暮らしているのです。

でも、「困った。全然不幸ではないのだ。」という書き出しから第1章が始まるほどに、優子はいつも慈愛に満ちた家族に囲まれ、親にたくさんの愛情を注がれて育ちます。

ありがとうと言える相手がいることは幸せだ

私はこの作品で心に残った言葉があります。それは「塞いでいるときも元気なときも、ごはんを作ってくれる人がいる。」です。

この言葉が心に残ったのは、ごはんを作ってくれる人がいるということが当たり前になっていて、その幸せに気づいていない自分がいたからです。

私は小学校の遠足でかわいいお弁当を作ってほしいとねだった日も、塾で帰りが遅くなった日も、どんな日もごはんを作って元気をくれる家族がいることに「ありがとう」と言いたい気持ちになりました。

また、「ありがとう」と言える相手がいることも、とっても幸せなことだと感じました。ほかにもこの作品には心があたたかくなる言葉が詰まっていて、そのあたたかさが全身にいき渡りました。

自分らしく生きたいと思える

この物語では、個性あふれる登場人物も魅力の一つです。

登場人物たちにはそれぞれが大切にしている価値観があって、それが周りに対する愛情として出ています。そしてバトンが渡されていくのです。

そのことは物語の中だけでなく、私たちの生活でも同じことが言えると思います。まったく同じバトンはなく、時代とともにバトンが渡されてきたからこそ、今の自分がいることをこの作品を読んで実感しました。

だから私は、バトンを渡してもらえるように、バトンを渡せるように、自分らしく生きようと思います。

これは私にとって、身近な人のありがたさと自分らしく生きることの大切さを教えてくれた本。読み終わってもう一度タイトルを見たとき、あなたもきっと自分を、身近な人を、大切にしようと感じるはずです。(高校生記者・manami=2年)