近年、日本では糖尿病や高血圧、肥満といった生活習慣病にかかる人が増加している。その背景には、かつては米や魚が中心だった日本人の食生活が豊かになり、高脂肪、高カロリーな欧米型の食事が普及したことや、ライフスタイルの変化によって食事をとる時間が不規則になっていることなどがある。
こうした食生活を栄養学の専門知識に基づいて改善したり、食を通して人々の健康を維持・増進できるようサポートしていくスペシャリストが、栄養士や管理栄養士だ。
栄養士、管理栄養士はいずれも国家資格。管理栄養士は栄養士の上級資格にあたり、職域もより広くなっている。
栄養士の代表的な仕事の一つは、学校や病院、福祉施設などで提供する給食の献立作りだ。子ども、傷病者、高齢者など、それぞれの身体の状態に合わせて、必要な栄養がバランスよくとれるような献立を立てていく。
また、栄養に関するさまざまな情報を伝え、よりよい食生活を送れるようアドバイスしたり、子どもが楽しみながら食に関する知識を身につけ、食の大切さを学んでいく食育活動なども行う。 企業の社員食堂でも栄養士が活躍している。最近は、社員食堂で提供される食事がヘルシーでおいしいと評判になり、レシピ本なども市販されているほど。このほか、食品関連企業に就職し、商品開発に携わるといったことも可能だ。
管理栄養士の場合は、規模の大きな施設で管理業務にあたったり、傷病者に対してより専門的な栄養指導を行ったりすることができる。例えば、病院の「栄養サポートチーム(NST)」の一員として、医師や看護師、薬剤師などとともに患者の栄養ケアを担当するのもその一つだ。
病院では、食事を治療手段の一つとして位置づけている。このため、患者一人ひとりの栄養状態を的確に把握し、食事量や食事の形態を調節するなど、栄養学の専門知識をフルに生かし、患者の回復をサポートしていく。
スポーツの分野でも管理栄養士が活躍している。疲労回復や持久力強化など、アスリートの目的に合う効果的な食事や栄養補給の仕方などを指導し、パフォーマンスの向上を図るのが仕事だ。この夏開催されたロンドンオリンピックでも、管理栄養士が現地に同行して日本人選手の栄養管理や食事管理を行い、活躍を支えた。
さらに、高齢化社会を迎え、在宅療養者が増加していることから、在宅訪問介護の一環として、療養者のもとを訪れて個別に栄養食事指導を行う管理栄養士を求める声なども増えている。
栄養士の資格は、厚生労働省の認定を受けた養成機関(大学、短大、専門学校)で、所定の課程を修了することによって取得できる。
ただし、管理栄養士になるためには、栄養士資格を取得したうえで、さらに管理栄養士国家試験に合格しなければならない。国家試験の受験にあたっては、4年制の管理栄養士養成課程を修了しているか、栄養士として一定期間の実務経験があることが条件だ。
健康的で安心・安全な「食」に対する関心が高まる中で、栄養士や管理栄養士に期待される役割は大きくなっている。栄養学はもちろん、それ以外の分野に関する知識も身につけていくことによって、活躍の場はさらに広がっていきそうだ。