高校生記者のめろんさんは、「往復6時間」をかけて住んでいる県の県立高校に通っています。なぜ、一日の4分の1を通学に充てる毎日を過ごす道を選んだのか、時間の使い方の工夫、苦労や家族のサポートなどを語ってもらいました。

朝4時半起き、通学中に朝食、予習復習、スマホ、気分でいろいろ

―6時間の通学…大変そうですね…。朝は何時に起きているんですか?

朝は4時半に起きています。準備してから5時20分ごろには家を出発します。徒歩で駅まで向かい、電車、バスを乗り継いで学校に向かいます。

帰りは18時に学校を出て、家に着くのは21時を回ります。

―通学時間は何をしていますか。

長いので、本当にいろんなことをしています。通学時間全部にやるべきことを詰めすぎると、疲れがもっと溜まるし、ぼーっとする時間も好きなので、自分が疲れないように工夫しています。

電車では、1時間半ずっと座れることが多いです。乗ったときに席が空いてなくても、必ずどこかで席が空くので、すぐ座ります。

朝ごはんのおにぎり。自分で作ることが多いが、母や姉が起きて作ってくれることも

行きの電車(約1時間半)では、朝ごはんのおにぎりを食べてからその日の予習を軽くやって、予定を確認します。その後は本を読んだり、スマホで音楽を聴いたり動画を見たり、寝たり、テスト前は英単語や古語の暗記、古典の文法書を読んだりなど、その日の気分で行います。

行きのバス(約20分)では、酔うので何かを読むことはないです。LINEの確認や調べ物など、スマホでやることがあったらそれをやって、なければポッドキャストや音楽を聴いて寝てます。

―帰りは?

帰りのバスで、次の日の予定や宿題を確認したり、家に着く時間を計算して、その日の夜にやることを整理したりします。電車では次の日の計画を立て、その日の復習をしてから、課題をこなしたり本を読んだりしています。

「学校愛」がある本当に行きたい高校を選んだ

―なぜ往復6時間もかかる高校に進学したのですか?

私が受験する予定だった高校について考えたとき、「なんか違うな~」と思ったんです。ピンと来なかった。今思えば、周りに流されてその高校を目指していたからだと思います。

「その高校について考えたとき、ワクワクするところ」を探し始めました。私は中学受験をしたため、この感覚を知っていました。

ネットで県内の高校を調べて、今の高校を見つけました。それは中3の夏でした。夏休み明けに説明会に行き、その高校の先生と話したとき、先生から「学校愛」を感じました。私はこういう先生方が大好きで、それもこの高校を選んだ大きな理由の一つです。

―長時間通学にためらいはありませんでしたか?

私は中学時代、電車とバスで往復約1.5時間かけて通学していました。だから、「3年間中学校に通えたのだから、大丈夫だろう」と思っていました。

中学3年生の私は「こんなに遠い」と実感できていなかったのです。入学してから、地図を友達に見せられて「こんなに遠いんだ!?」と初めて知りました。高校生活がこんなにも忙しいということも知りませんでした。

家族との時間がないのが辛い

―6時間通学で大変だと感じることを教えてください。

大変なことは、あげたらキリがないです(笑)

一番きついと思うのは、家族との時間がほぼないことです。朝は家族が起きる前に家を出て、帰宅は家族が夕食を終えてからなので、孤食が多いです。家族は本当に大切にしている存在なので、寂しくて仕方なくなるときがあります。でも、だからこそ、休日の家族との時間を本当に本当に大切にしようと思えます。

高校1年の間で、家に着くのが日付を越したことが4回ほどありました。雨や人身事故で電車が止まったときや、遊んでいたときです。それでも次の日は、また朝5時頃には起きないといけないので、疲れます。だから、天気が荒れて電車が遅れそうなときは、すぐ帰るようにしています。

他には、とにかく疲れることです。疲れがすごく溜まって、食欲もほとんどなくなってしまい、1カ月半で体重が5キロ落ちてしまったときがありました。

今は自分が疲れないように、また、自分の気分が落ちないように、「質のいい睡眠」と「食事」をしっかりとるようにしています。高2になって、やっと私は食事と睡眠の大切さを身に染みて感じました。あとは友達と話したり、好きな人のYouTubeを見たり、何でもいいから「一日一笑」を心がけています。

大変なことはあっても、私は「自分で決めたんだから」「これも大切な経験、いつか必ず糧になる」と思っています。

時間の使い方がうまくなった

―反対に、この通学を経験してきてよかったと感じることはあるのでしょうか…?

たくさんありますよ!

まず、時間の使い方が上手くなりました。1日の約半分が通学と睡眠の時間になるので、時間を工夫して使わないと、とてもやっていられません。

次に、自分の世界が広くなりました! 行動範囲が広くなり、新しい場所へ行って新しい人と関わり、自分が変わったと感じています。

中学も高校も自分で行きたい学校を見つけ、親や周りの人を説得してきているので、その選択をしたことがすごく大きな自信につながっています。

6時間通学はすごく疲れるから、投げ出したくなるときもあるけど、6時間通学をしている私だからこそ見える世界があって、とても楽しいです!

自分の体のことを良く知ってセルフケア

―かなり疲れることが多いようですが、何か対策はしていますか?

はい! 疲れないように工夫をするなど、セルフケアを心がけています。だから、自分のことをより知ることができています。

例えば、私は朝ごはんに米を食べないと頭が働かないこと、朝に強いこと、睡眠時間が短くても授業中は起きていられるけど集中できてなかったりすること、睡眠時間が短いのが何日も続くと気分が落ちやすくなって考えすぎること、私に必要な睡眠時間は大体5時間半だということ、寒かったりストレスを感じるとすぐおなかが痛くなるから、ブランケットと薬を常備したほうがいいこと…などです。

自分に関するこういう情報を把握するのは、本当に大切だと思います。これを知らないと、生活リズムが崩れ、体調が悪くなり、気分も上がらず、悪循環になるからです。実際高1の私がそうでした。

愛用のブランケット。大きすぎず小さすぎず、肌触りもいい。羽織れるのがポイント

母の「行ってらっしゃい」早朝必ず

―保護者のかたは反対しませんでしたか?

そうですね…親からは、最初は反対されました。

「遠いから無理でしょ」というスタンスでした。びっくりはしていなかったけれど、「本当に行くの?」という感じで、許してくれたときも、私が本当にこの高校に入学して3年間通うことになるとは思ってなかったんだと思います。

私の親は本当に協力的で、私の行動に制限をかけすぎないでいてくれます。私が何かやりたいことがあったら、いつもサポーティブです。親への感謝は、言葉では表しきれないです。

私よりも、親や担任の先生のほうが大変なんじゃないかって思います。

―なぜ?

心配をかけるからです。6時間通学の生徒が自分のクラスにいると思うと、先生は大変だと思います。高1のときも今も、担任の先生はすごく私のことを心配してくれて、「大丈夫? 疲れとってる?」と聞いてくれます。私がキャパオーバーにならないように、すごく気にかけてくれます。

親の場合は、私側からすれば家族との時間がなくて寂しいと思っていますが、親側からすれば「ごはん食べてるかな?」「学校つらくないかな?」と不安だと思います。

母は、仕事が終わるとすぐに私の部屋に来て、「おかえり!」って言ってくれます。朝も、私が家を出るのはすごく早いのに、「行ってらっしゃい」の一言を言うために起き上がってくれます。

朝、「行ってきます!」って言えて、「行ってらっしゃい」って送ってくれる人がいて、帰ったら「おかえり」って迎えてくれる人がいることは、私にとっては本当に幸せなことです。

周囲のサポートで「つらいけど楽しい」

―周りの人のサポートを感じているんですね。

はい。6時間通学は決して安易に人におすすめできるものではないと思います。私が大学に進学したときや、就職してから、6時間かけて通うことになったら、絶対にもう一度やりたいとは思えないです。今の私だからつらいと思うことがあって、今の私だから楽しめているんだと思ってます。

でも、これを乗り越えるのはもちろん私1人ではなくて、いろんな方向からのいろんなサポートがあって、私は高校を卒業することになるんだと思います。

今、高校生活の半分が過ぎ、遠距離通学を楽しいと思えるところまで来れたのは、親、祖母、中学でお世話になった先生方、高校や中学の先輩方、友達、高校の先生方のおかげです。

つらいけど本当に楽しいし、決して1人で挑む壁ではないから、強い意志さえあれば乗り越えられると思います。