オススメの小説を高校生記者のSaeさんに紹介してもらいました。
読後は嫌な気分に…だがそれが良い
『贖罪』湊かなえ著(双葉文庫、619円=税抜)
私の大好き小説は、「イヤミス小説」で有名な湊かなえさんの『贖罪』です。
イヤミス小説とは、読んだ後に嫌な気分になるミステリー小説のことを指します。このように聞くと、よい印象を持たないかもしれません。しかし、読後に嫌な気持ちを残せるということは、とても奥が深いがゆえの「面白さ」があるということだと思います。
友達の死体発見が少女たちの運命を変える
作品では、15年前、4人の少女が友達の死体を発見するという事件に遭遇します。犯人らしき人物と言葉を交わしていたものの、顔が思い出せず、事件は迷宮入りしてしまいます。
「友達の死体を発見した」という事実は同じですが、そのときに感じたり考えたりしたことは、それぞれ異なりました。その事件は少女全員に大きな影響を与えるものでしたが、事件の捉え方は異なり、事件後の行動や人生もそれぞれ違っていました。
人によって正解は違う、偏見に気付く
この作品は、人間の主観と偏見というものに気づかせてくれます。
自分には何も意図していないただの言葉であっても、相手にとってはとても重く、その人を強く縛り付けてしまうこともあります。善意による行動であっても、相手にとって快いものではないこともあります。
章ごとに主人公が変わり、物語は多角的な視点で書かれています。その視点の変化から、誰であっても、見ている世界はあくまで主観的なものでしかなく、そこには多かれ少なかれ偏見というものが付きまとっているということを知ることができました。人によって正解は異なり、物事には多面性があることを学ぶことができます。
『贖罪』は面白いだけでなく、気付きを得ることができる、奥の深いとてもすばらしい作品です。読書の秋に、ぜひ読んでみてはいかがでしょうか?(高校生記者・Sae=3年)