東京・暁星高校競技かるた部は、全国優勝12回を誇る強豪だ。昨年の全国大会「かるたの甲子園」(全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会)でも優勝を飾り、大会2連覇を目指した今年の大会は、新型コロナウイルスの影響で中止となった。失意に暮れる中、新たなスタートを切った同部部長の橋口新之介君(2年)に話を聞いた。(中田宗孝、写真は学校提供)
力が伸びるタイミングで休校に…
―新型コロナウイルスの影響で学校が休校になってから緊急事態宣言が解除されるまで、競技かるた部の部員はどのように過ごしていましたか。
2月末から4カ月近く、部の練習はまったくできませんでした。休部して間もない頃は、休校もすぐ終わるかなと思っていたんですが……気がついたら6月になっていたという感覚です。
本来、休部になってしまった時期は、部員1人1人のこれまでの練習の成果が見え始めて、かるた競技者としての力が伸びるタイミングなんです。練習ができず、とても残念な思いです。
―休部期間中、部長として部員たちに伝えたことはありますか。
部員にはLINEで、どんな方法でもかるたにできるだけ触れる日々を過ごしてほしいと伝えました。昨年、自分たちが全国優勝した大会の試合の映像がYouTubeにアップロードされているので「その動画を見てね」とか、(競技かるたを題材にした漫画)「ちはやふる」を読んでねとか。
悔しい気持ちは受験勉強にぶつけて
―4月末に「かるたの甲子園」と呼ばれる大会の中止が発表されました。みなさんの部は、昨年の同大会で日本一に輝いています。今年の大会が開催されないことを知った時、部員たちはどんな心境だったのでしょうか。
3年生部員はもちろん、「来年こそは大会メンバー入りするぞ」と意気込んでいた下級生部員も本当にしょげてしまいました。この大会に向けて、部員たちは何年も頑張ってきましたし、先輩たちの努力も見ていましたし……残念です。
僕自身も去年は全国大会の出場メンバーから外れていたので、今年こそはメンバーとして大会の雰囲気を感じたかったなという思いが募ります。悲しい気持ちを少しでもまぎらわせようと、他のかるた大会の情報を調べていました。
―特に3年生の部員は悔しい思いがあるのではないでしょうか。
そうだと思います。ただ、僕ら後輩の前では残念だという気持ちを表に出す感じではなく、自分たちの中で切り替え、今は進学に向けて受験勉強に打ち込んでいます。他の部活の大会中止が次々とニュースで報道されていたこともあり、4月半ばにはある程度の覚悟ができていたんだと思います。
換気・マスク・消毒して活動
―現在、コロナ対策を行いながら練習を再開させたそうですね。
はい。部員は検温や手洗い、消毒に気を遣いながら練習しています。練習中は、窓を開けて換気しながら行い、部員はマスクを着用しています。
―練習内容も新型コロナウイルス流行前と変わりましたか。
以前までは部員同士による対戦型の練習が主体でしたが、至近距離で部員が対面するため、試合を想定しながら部員1人でかるたをする「ひとり取り」の練習になりました。
「ひとり取り」は、自分の得意な札のとり方と違う方法を試せる場になります。ですが、相手がいないので、自分の実力以上に札を早く取れてしまうこともあるし、試合独特の緊張感や集中力を維持させるのが難しいんです。
本音をいえば、早く試合形式の練習をしたいですが、「ひとり取り」でも個々のやる気次第で力をつけられると思います。
やる気・目標を失ったけれど
―部のさまざまな状況が昨年度までと変化する中、橋口君はどんな部長を目指していきたいと考えていますか。
部長の存在って、後輩から見れば少し近寄りがたい感じだと思うんです。なので、僕は自分から積極的に後輩たちに声を掛けていき、教えられることは伝えていこうと思います。自分も先輩方から声を掛けられた時はすごくうれしかったし、先輩のかるたを間近で見て技術面でも得られることが多かったので。
現在の部は、休部期間中にこれまで以上にかるたと向き合う気持ちを高めた部員、大会出場の目標がなくなり、やる気を失った部員がいます。そのどちらにも目を配りながら、部員のやる気を引き出して、部全体のレベルアップにつなげていきたいです。
来年を見据えて
―最後に、今後の部の目標を教えてください。
目標はこれまでと変わりません。来年度の「かるたの甲子園」での優勝です。来年の大会をしっかり見据えて、モチベーションを高めていきます。僕自身もかるたの腕を磨いて強くなり、最後の大会に(中学生からの)6年間のすべてをぶつけたいです。
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チームデータ
1990年創部。高校生部員25人(3年生4人、2年生9人、1年生12人)。中高一貫のため中学生部員と共に活動。練習は週4日。2019年「全国高等学校小倉百人一首かるた選手権大会」で3年ぶり12回目の優勝を飾り、同大会での歴代最多優勝校タイ記録となった。