「かるたの甲子園」として知られる「小倉百人一首競技かるた 第46回全国高校選手権大会」(全日本かるた協会など主催)が7月、近江神宮・近江勧学館(滋賀県)で行われた。団体戦は398校が出場した都道府県予選を勝ち抜いた58校が熱戦を繰り広げ、関東第一高校(東京)が2連覇を成し遂げた。(文・写真 木和田志乃)
「他校の2倍練習してきた」
「去年優勝した瞬間に、2連覇という目標ができた」と、主将の矢島聖蘭(せいら)さん(3年)は振り返る。平日は2試合、休日は6試合を部内で行い、合間に素振りを繰り返すなど腕を磨き、「他校の2倍は練習してきた」と自負する。
部長の中村琴律(ことり)さん(3年)が中心となり、60人以上いる部員同士のコミュニケーションを日頃から大切にしてきた。部員同士の仲がよく、信頼関係が築けている。
「つらい」と言える環境つくり
矢島さんは自らプレッシャーをかける中で、負けが続くこともあった。練習の時から3年生のメンバーに「今年が最後だ」と伝えてきたが、2連覇の目標が重荷になり、ほかの部員たちも精神的につらくなる様子だったという。
そのため、話し合いをする時間を意識的に設け、「隠し事をせず『つらい』って言うなど、ひたすら自分たちの感情を吐ける環境を作っていた」(矢島さん)という。特に大会が始まるまでの2週間は重圧を感じて追い込まれたが、互いの気持ちを聞いてもらい乗り切った。
「気持ちの切り替え」で劣勢跳ね除け
かるたの甲子園の団体戦は、5人が出場して一対一の対戦を同時に行い、3勝以上で勝ちとなる。初戦で同校は2勝1敗となったが、残った2選手とも終盤まで劣勢だった。
相手がお手つきをした時は自陣から札を1枚送る。あと1勝するため、自陣にどの札を残すか考えながらの試合になった。監督の三原直也先生は「2人で1勝するための戦略が決まっていたので負けるとは思わなかった。勝てたのは練習の成果です」と目を細めた。
矢島さんは「(劣勢になる)危ない試合は必ず一つはあります。『危なくなっても1つ1つ気持ちを切り替えて試合をしよう』とあらかじめメンバーに伝えていたのが勝因」と分析した。
「高校で連覇する」約束が現実に
決勝は2018年の優勝校、浦和明の星女子高校(埼玉)との対戦となった。決勝前に円陣を組んで気合を高めた。「自分たちは絶対王者だと自信を持っていましたが、過信せず、Tシャツの裏に書いてある獅子搏兎(ししはくと)の言葉のように、どんなときでも手を抜かず、全力で自分たちのかるたをして勝ち切ろうと話しました」(矢島さん)
小西美彩子さん(3年)さんが早々に1勝を挙げ、「関一1勝!」と声を上げた。矢島さんは小西さんと視線を合わせ、笑みを浮かべた。「3年間ずっと一緒にやってきた。中学3年生のとき、高校選手権で連覇すると約束して一緒に高校に入ったので、その約束を達成する道のりを歩いている」と思ったという。その後も相手を圧倒して4勝を挙げ、悲願を達成した。
-
関東第一高校競技かるた部
2014年創部。部員67人(3年生18人、2年生29人、1年生20人)。練習は平日放課後~18時30分、休日9時~18時。「何事も本気で頑張る」が部のモットー。焼き肉が好きな部員が多い。