部員の8割以上が高校からバトンを始めるが、冬のバトントワーリング全国大会に4年連続で出場する強豪だ。この夏の全国高校総合文化祭にも3年ぶりに出場。4月に引退した3年生が一時的に戻り、2・3年生の編成チームを組む。準備時間は短いが「最高の演技を見せたい」と燃えている。 (文・写真 白井邦彦)

冬のマーチングバンド・バトントワーリング全国大会の常連校は、多くが私立だ。富田林高校のように8割以上が未経験者の公立は珍しい。しかも、進学校である同校は、大学受験に備え3年生は4月に引退。バトン経験2年未満の部員を軸に全国大会6度出場を果たしてきた。顧問の日下部暁洋先生は「他校の先生からどんな練習をしているのかを聞かれることも多い」と言う。

部員が短期間で急成長する理由はいくつかある。一つは猛練習だ。前キャプテンの川原田真理さん(3年)は「大会前は平日に朝練を追加し、休日は朝から晩まで練習。それでも、約50人の息を合わせるのは難しい」と言う。思い通りにならず、何度も悔し涙を流した。それでも投げ出さずに練習したのは「一つのものを創り上げる達成感は何事にも代え難い」からだ。「その中で一生の仲間ができるんです」

7年ほど前に行った意識改革も、バトン部が躍進する原動力になっている。日下部先生は「行けたらいいなではダメ。自分たちで全国出場を奪いにいこうと言い続けてきた」と振り返る。新キャプテンの中村彩華さん(2年)は「5年連続の全国がかかる今年、キャプテンに選ばれてうれしい半面、不安もある」と言う。明確な目標と猛特訓、この2つが急成長の大きな要因と言えるだろう。

8月に富山県で開かれる全国高校総合文化祭はマーチングバンド・バトントワーリング部門のほか、総合開会式後のパレードにも出演する。中村さんは「先輩が戻って来られて約3週間で本番。練習時間は短いですが、金賞をいただいた関西大会と同じくらいの演技ができるように頑張りたい」と言う。引退後、約3カ月のブランクに多少の不安があると話す川原田さんだが、「富高らしい一糸乱れぬ演技、観衆をにらみ付けるくらいの迫力を取り戻して、最高のパフォーマンスを魅せたい」と士気を高めていた。