子どもが好きな人なら一度は憧れる幼稚園、保育園の先生。今回は、そんな夢を持ってがんばる高校生の取り組みと、実際に夢をかなえた先生を取材した。

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★子どもが好きだから、がんばれる 東京・蒲田女子高校 幼児教育クラス

学校の中庭で 左から吉田愛美さん(3年)・古口慈子さん(2年)

「ピアノは全くの初心者でしたが、授業で基礎から教えてもらえました。児童文化などの授業もあるなど幼児教育の専門的なカリキュラムも充実していました」と今までの高校生活を振り返るのは、小学校高学年の頃から保育士に憧れていたという吉田愛美さん(3年)。古口慈子さん(2年)は、「硬式野球部やバトミントン部などの活躍も盛んで、まじめで元気な校風に魅かれて、入学しました」と語る。ダンス部に所属し、地域のお祭りなどで、ヒップホップ等の発表を重ねる。「保育士になったら、体を動かす楽しさを子どもたちにも伝えたい」
 同校には附属の幼稚園があり、1年次から授業として年に3回の保育実習が行える。2年次以降の夏休みは、近隣の保育園で、3~5日間の実習も可能だ。幼稚園と保育園では、子どもに接する時間も、子ども一人あたりの先生の数も全く違う。「保育園での実習は朝から夕方までと時間が長い分とても疲れましたが、1日の仕事の流れもよくわかってとても勉強になりました」と古口さん。「子ども全員に目が行き届くように、この辺にいるといいよ……など、先生方から具体的なアドバイスももらえました」と吉田さんも振り返る。
 子どもが好きだから、大変でもより長い時間子どもと一緒にいられる保育士を目指すという二人。吉田さんは、「子ども一人一人をきちんと見守れる優しくて厳しい先生になりたい」と抱負を語った。( 文・写真 山口佳子)

来年2015年度から、新しいコース編成を実施する同校。現在の幼児教育クラスも、幼児教育・保育コースと名称を変え、専門学校や大学でパネルシアターや読み聞かせ等を教えている先生方を迎えるなど、より専門性を高めたカリキュラムが予定されている。また、世界で初めて幼稚園を創設したとされるドイツの保育者養成校エバンゲリシャス・フレーベルセミナー校と姉妹校の協定を締結し、2015年2月以降、希望する生徒を年1回派遣する準備も進めている。

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★夢は園長先生 東京・日体荏原高校 幼児教育コース

私たちのことをたくさん考えてくれる先生です 左から荒木千聖さん・平下純子先生・新井優希さん

日体荏原高校の総合コースでは、2年次から幼児教育コースが専攻できる。
「保育実習などで校外の保育園や幼稚園にもうかがうため、幼児教育コースを希望する生徒には作文や面接を課し、やる気と自覚を確認しています」と、幼児教育担当の平下純子先生は言う。
 入学前から幼児教育コースを目指していたという荒木千聖さんと新井優希さん(ともに3年)は、「保育実習が一番好きです」と声をそろえる。「子どもたちがかわいいので、できるだけ長く一緒にいたい」と新井さん。希望をすれば、授業としての実習だけでなく、運動会や預かり保育をボランティアで手伝うこともできる。こうした経験を重ねるうち、「子どもがどんな動きをするか予測して対応できることが増えたかな」と、荒木さんは自分の成長を振り返る。

ピアノの練習も大好き!

実習ばかりでなく、学内での授業も充実している。現在、児童文化の授業では、人形劇の制作に取り組んでいる。子どもによりよい生活習慣を身につけてもらうことをテーマに、ストーリー作りからチャレンジした。「見えやすいように人形を大きくしようとか、言葉づかいをどうしたらいいかなど、小さな子どもたちに見てもらうことを想像しながら、いろいろ工夫しています」と、新井さんは楽しそうに話す。
 同校では、2年次から大学の見学を薦めるなど進路指導を行う。「幼児教育のこれを学びたいという自覚を持って、進路先を選ぶように生徒には言っています」と平下先生。「自分の卒園した幼稚園で1日も早く働きたい」という荒木さんは短大へ進学する。「実習先で障がい児と接する機会があり、特別支援学校教諭の資格にも視野が広がりました」という新井さんは、4年制大学に進学する。「幼稚園教諭1種の資格もとって、将来は園長先生を目指します!」と、夢を語ってくれた。( 文・写真 山口佳子)

 ★幼稚園の先生、保育園の先生 なり方ガイド

幼児を対象とする幼稚園教諭と保育士。幼稚園は文部科学省が管轄する教育機関なのに対し、保育所(園)は厚生労働省が管轄する児童福祉施設だ。そのため幼稚園教諭になるためには幼稚園教諭免許が、保育士になるためには国家資格である保育士資格が必要となる。近年では幼稚園と保育所(園)の機能を合わせ持った「認定こども園」も増えており、その場合は、幼稚園教諭免許と保育士免許のダブル取得が有利になる。
 幼児の保育と同時に保護者のケアや指導も重要な仕事のひとつとなる幼稚園、保育園の先生。そのため一般教養やコミュニケーション能力、また、最近では外国人保護者も増加していることから異文化理解能力も求められる場合が多い。