
有頂天家族
森見登美彦著(幻冬舎文庫、686円)
◆人に化けた狸が活躍
千年の都・京都には、古来より人に化けた狸と天狗が住んでいた。
「面白おかしく世を渡っていく」がモットーの下鴨家三男の矢三郎は自由気ままながらも、父の死に秘められた真相を暴くべく兄弟と協力して古都を駆け抜ける。
裏切り、邪魔だて、数々の困難の中でも矢三郎は自分を曲げることなく、楽しみながら乗り越えていく。
忙しい日々の中でクスリと笑えて毎日が少し楽しくなる一冊。(小髙渉君・1年)

神様の御用人
浅葉なつ著(メディアワークス文庫、570円)
◆スイーツ好きの神様狐があらわれた!
道端で助けたおじいさんに謎の本を渡された青年、良彦。
その前に現われたのはふわふわで、偉そうで、スイーツが大好きな「神様だ」と言う狐だった。
そして「本」を持つものは、「神様の御用=願い」を叶えなければならないそう。
良彦は、悠久の時を生きる八百万の神々が抱える悩みに向き合っていく。
ときにほっこり、ときにじーんとあたたかくなれる物語だ。(林奏芽さん・2年)

ピスタチオ
梨木果歩著(ちくま文庫、620円)
◆愛犬と二人の生活
武蔵野に暮らすライターの主人公、棚。
10年ほど前、「野生の感じ」が恋しくなり、飼い始めた雌犬マースの調子が最近良くない。
マースの「失われたこども」が原因なのだろうか。
そんな折、アフリカ取材の仕事が入り、棚は導かれるようにウガンダへ。
著者の豊かな自然描写が、アフリカでのストーリーを彩っている。
自分の中のもやもやを、すとんと腑に落ちさせてくれるような作品。(吉江真緒さん・2年)

風神秘抄
荻原規子著(徳間文庫、上下巻とも650円)
◆鳥の王が人間臭く魅了的
主人公の草十郎は笛の名手だ。
ある時、森の中で笛を吹いていると、口達者な烏の鳥彦王と出会う。
草十郎とヒロインである舞姫の糸世とは全く反りが合わない様子だ。
何かと衝突してしまう二人にあきれつつ、仲を取り持つ鳥彦王の姿は、本作の誰よりも人間臭く魅力的である。
きっと読後に「自分もこんな友人がほしい」と思うだろう。(P.N めぐみ・2年)

ペンギン・ハイウェイ
森見登美彦著(角川文庫、640円)
◆とある夏の思い出
ある日、郊外の街の空き地に突然現われた、たくさんのペンギン。
それを見た小学4年のアオヤマくんは「ペンギンたちはどこから来たのか?」とクラスメイトと研究を始め、歯科医院のお姉さんが関わっていると気づく。
大切な夏の思い出を描いた、少し不思議でとても温かい物語。僕たち高校生が忘れてしまった好奇心を思い出させてくれるかもしれない。(P.N 57は素数・2年)

吾輩は猫である
夏目漱石著(角川文庫、600円)
◆猫の人間観察記
主人公の猫には名前が無い。
そんな特徴を持つ猫は自宅や近所をふらつきながら文明、世相が大きく変わる激動の時代を生きる人々を眺めている。
本作は100年以上前に書かれた作品にも関わらず、描かれている人々の生き方は現代の私たちに重なるところが多くあると、思わせてくれる。
おもわず読後に、現代を生きている猫が見ている人間界を想像してしまう1冊だ。(P.N チームY・2年)
