全国高校総体(インターハイ)のスキーで、男子総合優勝7回の北照(北海道)が、今季は男女そろっての総合優勝を目指す。創部95年、全日本クラスの選手を生み出し続ける部の強さの秘訣は、選手の土台をつくる夏場のハードな基礎練習にあった。 (文・写真 岡崎敏)

 

三方を山で囲まれた港町の小樽市は、観光でにぎわう一方、北照高校から見える天狗山スキー場では、90年前に第1回全日本選手権が行われるなど、スキーの歴史が詰まった街でもある。同校OBの工藤聡監督(34)は「小樽のスキーの歴史も100年になるので、盛り上げていきたい」と、北照の活躍でスキーの街に活気を与える意気込みだ。

「小樽の豊かな自然を生かした泥くさい練習」(工藤監督)が、部の伝統になっている。夏は、山の上にある水天宮までの長い階段上り、塩谷での砂浜トレーニング、天狗山のゲレンデ走と、小樽の自然を使って徹底的に鍛えこむ。

全国中学大会5勝の大器・安藤麻(1年)=北海道・旭川東陽中出身=は「小樽の坂を上るのは、最初はすごくつらかった。でも、練習はどこよりもたくさんしていると思うので、自信を持ってスタートできる」と話す。12月のぬかびら源泉郷大会(北海道)女子大回転で早くも2連勝するなど、1年目から手応え十分だ。

名物練習は、皆川賢太郎(2006年トリノ五輪回転4位)、佐々木明(W杯最高2位)ら偉大な先輩も経験してきた。同じ練習をすることで、雲の上の存在が身近になる効果もある。「憧れの存在を、ライバルと思えるのは最高です」と工藤監督は話す。

石川晴菜主将(3年)=石川・紫錦台中出身=は「皆川さんが『砂浜で自分たちも重りを引いて走ったよ。頑張れよ』と言ってくれます。夏はつらい練習をしたので、冬は絶対に勝ちたい気持ちになります」と、大先輩との交流が励みに。練習は男女の区別なく切磋さ琢磨する環境で、女子も力を付けた。

競技だけでなく、監督の父、裕さんの監督時代(38年間)から、練習日誌を書く日課が続けられ、心も磨かれる。日誌は部の財産として残るため、誤字脱字は、厳しくチェックされる。自主練習では、課題克服のために各自がメニューを工夫し、自主性が培われる。

部員は、中学で実績のある選手ばかりではない。そんな部員も「一生懸命やれば伸びますし、どんな才能を持っていても磨かないと光りません」と、工藤監督はそれぞれのレベルで上を目指して頑張る姿を期待する。そこから互いを尊敬する心、チームワークも生まれる。

OBの影響などで、世界への意識も高くなる。有望株の柿崎夢之助(2年)=北海道・余市東中出身=は「海外遠征で意識しているのは、向こうのスキー場で友だちをつくることです」と、異国で積極的な交流を心掛ける。来年はソチ五輪(ロシア)もあるが、石川、柿崎、安藤ら全日本ジュニア勢は「ソチより次の平昌(韓国)です」と口をそろえ、5年後に狙いを定バーベル練習に励む北照スキー部北海道ランニングなど基本的な運動がメーン(山坂でのランニングや自転車、坂道や砂浜でのタイヤ引き、木のハンマーでタイヤをたたく背筋力強化など)。冬~早春は、天狗山、キロロなど近郊スキー場でゲート練習などをすることもあるめる。その前にインターハイで勝って、世界への足掛かりにする。

取材を終えて

小樽の坂道は、傾斜がきつい。冬は、駅から学校へ向かう車も上るのが大変なくらいだ。高台からは絶景が広がるが、ここが練習場所なら、どんなに部員はつらいだろうと思いを巡らせた。だが部員たちは、元気いっぱい。どの顔も、夏の坂道トレを乗り越えた自信にあふれていた。