高校の文化祭で行われる人気企画「コーヒーカップ」は、高校生たちが「手動」で回転させて楽しむアトラクションだ。だが、その常識をくつがえす新機能を搭載した「電動コーヒーカップ」が9月7、8日に行われた筑波大学附属高校(東京)の文化祭「桐陰祭」で登場した。同校は、高校文化祭でのコーヒーカップにおける元祖制作校として知られている。同校によると、高校文化祭で初披露とみられる、驚きのコーヒーカップを作りあげた生徒たちに制作エピソードを聞いた。(文・写真 中田宗孝)

電動式コーヒーカップ「つくカップ」の稼働を成功させた有志メンバーたち

遊園地のコーヒーカップ目指して 「江戸切子」の模様あしらい

来場者を乗せた4基のコーヒーカップが電動で「ウィーン」と回りだす。本体を動かす4個のキャスターのうち、モーターで稼働する2個が回転運動を生み出す仕組みだ。電動式のコーヒーカップのインパクトもさることながら、六角形の座席の完成度も目をみはる。「広がりを感じるようなカップ(座席)を作ってみたかったんです。それこそ、遊園地のコーヒーカップのような」(企画代表の道本将弘君・3年)

同校文化祭の今年のコンセプト「江戸」に合わせて、デザイン担当の山内葵さん(2年)らが座席の外側に「江戸切子」の模様をあしらった。「外装の作業中は『しんどい』と思う時もあった。でも、『きれいだね』と写真を撮るお客さんたちの笑顔を見られました」(山内さん)

道本君が3D設計したコーヒーカップ本体の図面(左)。右写真の完成作品と見比べると、ほぼ構想どおりに制作したことが分かる(左写真は道本君提供)

常に人手不足、予算不足…

学年を越えた有志生徒14人で制作に励んだ。部活動や、文化祭クラス企画の担当を掛け持つメンバーが多く、作業中は常に人手不足、欲しい部品が思うように購入できない予算不足に悩まされ続けた。実は、昨年も有志生徒でコーヒーカップの電動化に挑戦したが、失敗に終わっていた。

そんな状況の中、企画代表の道本君はコーヒーカップの設計、電動化させるための電子工作を一手に担った。「最小の資材と労力でやるしかない。となると、コーヒーカップ本体をできるだけ単純な構造にする必要があった」(道本君)

熟考の末、過去2年制作していた一度に8基のカップを回す「スーパーコーヒーカップ(16人乗り)」のサイズを、4基へとひと回り小さくし、電動化をより実現しやすくさせる決断に踏み切った。動力部は、コーヒーカップに付くキャスターに、モーターの動力を伝達させるため、自転車用のチェーンを加工して活用。「それをモーターとキャスターの連結部分に。強度も十分にありました」(道本君)

そして、漏電対策を施すなど安全面には細心の注意を払った。「もしもコーヒーカップを動かしている最中に、チェーンが切れても本体に付くキャスターには、まったく影響のない構造にしているんです」と、技術者の矜持をのぞかせる。

電気系統の作業をする道本君。「頑張っている道本先輩の姿に、私たちも引っ張られました」(脇水さん)