新体操競技は、点数を競うだけではなく、見ている人を楽しませる、感動させる「エンターテインメント」という側面のあるスポーツ。インターハイは高校生にとって最高の舞台だ。開催地・鹿児島から団体に出場する鹿児島実業新体操部を紹介する。(文・写真 椎名桂子)

昨年の作品「ヤングマン2019」で挑んだ九州大会では、曲にぴったり合った同調性の高い演技でチームの最高得点を大幅に更新した

部はテレビCMにも出場

部は、2004年のインターハイでピンクレディーの曲を使用したコミカルな演技を披露して以来、毎年、オリジナリティーあふれる演技で人気を博してきた。今年の新体操競技が開催される鹿児島市は昨年と今年、観光誘致キャンペーンに鹿児島実業の男子新体操部を起用。選手たちが「維新dancin’鹿児島市」という軽快な曲に乗せて踊るCMはテレビでも流れ、部は今や「鹿児島の顔」だ。

しかし、このCMで見事な演技を披露していた選手のほとんどが今年の春に卒業しており、メンバー一新で挑んだ3月の全国高校選抜では、得点8.550で19チーム中17位と厳しい評価を受けた。

開催地枠があるためインターハイ出場は確定していたものの、6月の九州大会では、できれば4位以内に入って実力で出場権を勝ち取りたいと、練習に励んで臨んだが5位に。

九州大会は、4位の福岡舞鶴でも15.650と例年以上にレベルが高かった。鹿児島実業も、ミスを連発した高校選抜の時とは別のチームのような、まとまりのある演技で、得点は13.200と、飛躍的に伸びたが4位には届かなかった。

「インターハイで初披露する今年の作品のイメージで」とリクエストしたら、このポーズに。果たしてどんな演技なのだろうか

急成長に手応え

現在のメンバーの中で唯一、昨年のインターハイにも出場していた主将の藤本祥太(3年)は「九州大会での演技は、自分たちが頑張ってきたことを出せた。福岡舞鶴には負けてしまったが、高校選抜の時とは別人だったと監督や保護者の方たちからも言ってもらい、自信になった」と言う。

藤本が1年生の時は、予選敗退でインターハイのない夏だった。そこからの1年間を必死にやってきた結果、2年生では九州大会4位でインターハイ出場。くしくもこの年に亡くなった西城秀樹さんの曲を使用した昨年の演技は、力のある先輩たちが多かったこともあり、「面白いだけじゃなく、うまい!」と大好評だった。

あの時のチームと比べると、今年のチームがまだまだ力不足だということはわかっている。それでも、この3カ月間で5点も得点を伸ばせたことには大きな手ごたえを感じている。

「今までにない鹿実」魅せる

「今年のインターハイは、地元開催なので、メンバー全員が演技の中で自分たちの決めた目標を果たして、本番で最高の演技をしたい」と藤本は意気込む。

そして、インターハイで初披露となる、気になる新作演技については、「鹿実らしい面白さは保ちつつ、今までにはない鹿実、を見せる演技になります」と含みのあるコメント。テレビや動画サイトで見たことはあっても、鹿実の演技を生で見たことのない人は地元でもまだ多い。鹿児島でのインターハイではより多くの人に鹿実の演技を届けるつもりだ。

チームデータ

1983年創部。部員22人。(3年生4人、2年生7人、1年生11人)、2011年から16年までインターハイ団体に連続出場。17年に途切れたが、18年に復活。個人優勝も2人輩出。