甲府南高校(山梨)の文化祭「第55回緑陽祭」(6月21、22日)が開催された。同校の文化祭では、毎年恒例の催しとして、全学年・各クラスがダンボール製の造形物を製作し、その出来栄えを競う「造形コンクール」が実施される。上位に入賞した作品を紹介する。(文・写真 中田宗孝)
ガムテープは使っちゃダメ 2週間で作り上げ
造形コンクールの歴史は古く、第1回から行われ、プラスチックや木材、ペットボトルといった素材を用いて個性あふれる造形物を製作してきた。2002年度からは、素材を段ボールとボンドのみに限定し、現在に至る。また、ガムテープの使用が禁止されており、製作を担う各クラスの造型班のメンバーたちの創意工夫が問われる。
約2週間弱で作りあげる、約3~4メートル四方の大きさの造形物は、文化祭中、校門からすぐのロータリーと駐輪場に設置。今年度は21作品が展示され、訪れた来場者たちの目を楽しませた。各作品は、審査員の教員と文化祭実行委員の代表生徒による審査が行われ、文化祭の最終日に順位を発表。造形物の完成度はもちろん、発想や表現方法、技術力などが審査基準となる。審査の結果、野球バットを持って構えるゴジラを製作した3年5組の造形作品「55ゴジラ」が1位に輝いた。
1位 松井秀喜選手の打撃フォームそっくりのリアルゴジラ
3年5組は14人で野球バットを構える「55ゴジラ」を制作。クラス替えはなく、1年時から毎年ほぼ同じメンバーで制作に励んだ。文化祭が55回目となることから発想を膨らませ、55番の背番号で知られる元メジャーリーガーの松井秀喜選手、その愛称、ゴジラを作品にした。よく見ると、松井選手の打撃フォームにそっくり。「クラスの野球部員に意見をもらい、バッターボックスに立つ松井選手の肘の角度、足の開き方を忠実に再現しました」(佐野竜弥君)
水を含ませてしならせたダンボールを曲線部に活用したり、ダンボールの表面に接着剤を塗ってツヤ感を演出したりと、各造形班の創意工夫が作品の完成度を高める。3年5組のゴジラは、色味の違うダンボールを巧みに組み合わせて、ゴジラの皮膚のゴツゴツした質感を繊細に表した。
先生らによる審査の結果、「55ゴジラ」が見事1位。「歓喜の渦がクラスに広がり一体感を抱いた。3年間の造形制作で、僕らはクラス愛をより深めました」(齋藤祐也君)
2位 今にも天に昇りそう 竜のうろこは3000枚
「造形コンクール」2位に選ばれたのは、3年1組の作品「画龍転生」。 製作リーダーの蔦政陽君を中心に11人で、迫力満点の竜を作りあげた。まるで天空を勇壮に舞うかのような動きに目を奪われる。「アーチ型の竜の胴体を作るのはかなり難しいと思いました。でも、その部分をうまく表現できれば、よりインパクトのある造形物になると考え挑戦しました」(保坂檀君)
竜のうろこは、色味の異なる段ボールを巧みに織りまぜて一枚一枚製作し、総数は約3000枚にも及んだという。竜の口の中も丁寧に作り込むことで、表情に力強さが加わった。「段ボールを水につけると独特の“しなり”を出せる。それを曲線部に使うなど、1、2年の時の造形製作で培った技術が随所に生かされているんです」(保坂君)
3位 クラス全員で毛並みをチョキチョキ たけだけしいグリズリー
「造形コンクール」3位は、野性味あふれる熊を製作した1年1組の作品「クマ出没中」。造形製作に初挑戦の1年生ながら、製作リーダーの神宮寺俊輔君ら13人のメンバーは、クオリティーの高い作品を完成させ、審査員たちを驚かせた。「モチーフの一つになったグリズリー(主に北アメリカに生息する熊)など熊の写真を、横から後ろからとさまざまな角度から見比べて、どんなポーズにすれば迫力が出せるか考えました」(神宮寺君)
ほえる熊のたけだけしさをより際立たせる毛並みは、段ボールを細かく切って表現。毛の製作にはクラス全員が携わった。「クラスのみんなが朝時間や休み時間を使って協力してくれた。黙々と段ボールを切る光景を見た時、良い作品になると感じました」(今澤志音君)