東京大学は3月29日、2月に実施した2019年度一般入試の出題意図や解答をホームページで公表した。これまで問題は原則、掲載していたが、解答などの公表は初めてという。
大学入試の情報公開をめぐっては、文部科学省が各大学に解答の公表を原則として求めつつ、「一義的な解答が示せない記述式の問題」などについては解答例か出題意図を公表することを要請していた。
記述式問題は意図を、記号選択式問題は解答を掲載
東大はこれまで、原則として問題はホームページで閲覧可能にしてきた。19年度入試については、問題に加え、各科目の出題意図も初めて公表した。記号選択式問題など解答が一つに定まる問題については解答も公表した。ただし、英語など外国語の問題は著作権の関係でホームページには掲載せず、学内の広報センターで閲覧できるようにした。また国語の問題と出題意図などは、著作権の関係上4月下旬に公表する。
公表方法は科目ごとに差
公表方法は科目ごとに異なる。英語などは、「要約問題」「作文問題」などの形式ごとに「和文の外国語訳においては、日本語で与えられた情報を外国語で過不足なく、正確に読み手に伝える能力が試されています」など、具体的な出題内容には触れずに意図を語っている。数学は、「数学的に思考する力」など全般的に求める力を説明する一方で大問ごとの意図は示さなかった。一方、世界史などでは大問ごとに「一見ばらばらに発展してきたように見える地理的隔たりの大きな地域間の交流について改めて考えさせることをめざした」(第3問)など、問題を通じて受験生に伝えたいことを明らかにしているケースもあった。
選択式問題で2種類の解答も
各科目とも記号選択式の問題は解答を公表した。生物の選択式問題の中には、ほとんどの教科書で触れられている最新の研究を知っているかどうかで到達できる解答が異なるとして、2種類の解答を示した問いもあった。
解答や出題意図の掲載について福田裕穂理事・副学長(入試担当)は「(大学側が)記述式の解答を出すと(受験生が)絶対的な解として覚えてしまう」と話し、記述式問題については解答例も示さず出題意図のみ公表する考えを示していた。「大事なのは高校生、受験生がどう勉強するか。東京大学の入試は難しいというネガティブなメッセージが伝わっている可能性がある。東大の入試(に込めた)メッセージを伝えたい」とも語り、受験生の役に立つ公開方法を探っている考えを強調していた。今回は限られた時間の中で、科目ごとに公表方法を検討したといい、20年度入試以降に方法を改善する可能性もあるという。
東大が出題意図を公表しているページはこちら。