ニューヨーク派遣が決まったチーム

高校生が世界各国の大使になりきり、実際の国連を模した会議で決議の採択を目指す第12回全日本高校模擬国連大会(グローバル・クラスルーム日本委員会など主催)が11月17、18日の両日、国連大学(東京)で開催された。参加者は「武器移転」を議題として討議を重ねた。最優秀賞には桐蔭学園中等教育学校(神奈川)と渋谷教育学園幕張高校(千葉)が選ばれた。受賞した8チーム計16人は、来年5月にニューヨークで開催される高校模擬国連国際大会に日本代表団として出場する。(文・写真 高校生記者 福元まりあ)

国と国との間で行う武器の貿易などがテーマ

大会では、同じ学校の2人でペアを組み、国連加盟国のいずれかの大使として、実際の政策や外交方針をもとに、国益を考慮しながら決議採択を目指しスピーチや交渉を行う。全国大会には、事前の書類審査を突破した86チーム172人が出場した。会議は実際の国連総会と同様のルールのもとに行われる。公式のスピーチや文書作成は英語で行われるが、大使同士の非公式の交渉では日本語を使用することができる。

今回の議題は、国家間の武器貿易や武器給与を指す「武器移転」。近年、核軍縮の流れや、過激派組織やテロという新たな脅威に直面するなど、安全保障は非常に注目度が高いテーマだ。だが、高校生にとっては決して身近な分野ではない。各チームは各1カ月、担当国が決定してから外交政策の背景を把握するため文献を読み込むなどリサーチを進め、本番での議論に備えてきた。

大会では、国連総会軍縮・安全保障委員会(第一委員会)を議場として想定し、会議が行われた。会議の時間は限られており、1秒でも決議案の提出が遅れると受理されないため、スピード感が求められる。参加者は議場内を自由に移動し、より多くの賛同国を得るため制限時間ぎりぎりまで交渉を粘った。

争点を掲げて議論を深める

議論が停滞…「原点に立ち返ろう」と働きかけた

AとB、二つの議場に分かれて実施された。議場Aで最優秀賞を受賞したのは、ニュージーランドを担当した桐蔭学園中等教育学校の西田翔君(1年)と袴田英希君(2年)のチームだ。難解な議題について他国と交渉をする上で、専門用語を英語の略称ではなく日本語の元の呼称を使用して分かりやすく伝えるよう心掛けたという。

また、困難だったこととして、同様の方針を持つ国々でのグループ内で議論が停滞してしまったことを挙げた。そのような際には、「自分たちは何のために集まったのか原点に立ち返るようグループに働きかけた」と袴田君は話した。その周囲の国々への働きかけやグループの士気を高める姿勢が評価され、最優秀賞に選出された。西田君は模擬国連を始めて1年目。世界大会に向けて「先輩の袴田さんについて頑張る」と意気込んだ。

時間を惜しんで議論をする生徒たち

積極的にリーダーシップを発揮 国際大会見据える

議場Bで最優秀賞を受賞したのは、イギリスを担当した渋谷教育学園幕張高校の荒竹ゆりなさん(2年)と頓所凜花さん(2年)のペア。欧州連合(EU)の中心的な国であるイギリスの担当大使として、「表向きは平和と言っていても、実際の国益とは異なる場合があることを意識した」と話した。EUの結束を強める役割を買って出るなど、積極的な姿勢が印象的で、講評においても「リーダーシップを発揮し全体のマネジメントに貢献した」と評価された。2人はすでに国際大会を見据え、「全力を尽くします」と気持ちを高めた。

派遣チームは以下のとおり。国際大会で日本代表団はデンマークを担当する予定だ。

【最優秀賞】

千葉・渋谷教育学園幕張高校、神奈川・桐蔭学園中等教育学校

【審査員特別賞】

岐阜・岐阜高校、愛知・海陽中等教育学校

【優秀賞】

兵庫・灘高校、神奈川・浅野高校、東京・麻布高校、東京・聖心女子学院高等科