【あらすじ】 上リ坂(のぼリざか)高校新聞部の3年生・篠田ヒロは、自分の学校がここ数年で進学実績を伸ばしている秘密を探るため、取材を始めた。定期テスト前の新聞に載せるネタを探しに学年主任の元を訪ねた。

解答見ないで演習を繰り返そう

 

2週間後に迫った定期テストに向け、学校全体が勉強モードになっていた。この時期に定期テスト情報はよく読まれるだろうと思い、学年主任の村川先生に取材した。先生は優秀だと評判で、若くして学年主任に抜擢(てき)されたらしい。

――先生、定期テストで良い点を取るにはどうしたらいいですか?

「各教科の先生から、どの問題集をやるべきか指定されているはずだ。その問題集に載っている問題を、解答を見ないで、解答と同じ答案が作れるようになるまで繰り返す。ただそれだけだ」

――繰り返すっていうのは、だいたいどれくらいですか?

「5回は必要だと思っておいた方がいいよ。1回目はほぼ解けない。当たり前のことだから恥ずかしくもなんともない、すぐに解答を読んで考え方をインストールするんだ。続いて解答を見ないで解けるようになっているかを確認すること。これで1セット終わりだ。また後日、2度目にチャレンジする。1回やっただけじゃ頭に入らないから、8割くらいの問題は解けないだろうね。そうしたら解答を見て解き方を確認して…というのを繰り返していく。こうして順調に2割ずつできるようになっても、最低5周は必要になる。だから5周以上やるのがスタンダードだと思っておいた方がいい」

――そうやって問題集は使うんですね。

「だが、これだけじゃない。問題集は解説をよく読むことが本当に重要だ。その問題の解説も大事だが、“その手の問題”が出題されたときにどのように対処すべきかが書かれた箇所、往々にしてそれは「ポイント」という項目なのだが、そこをよく読むのが大切だ。それから、類題が載っていたら解く。類題も同じ考え方で解けたら、本当に習得しないといけない考え方、解き方が得られたということが確認できるからね」

確かに、問題集に載っている問題は解けるけど、定期テストや模試になると手が出ない経験が僕にもある。

「問題集は、網羅的な問題集を1冊やり込むのは当たり前。さらに類題が載っている問題集を解くことで、応用力が付いているかを確認するんだ。僕はこれを“ちょいずらし問題集”と読んでいるよ」

――では、参考書はどのように使ったらいいですか?

「参考書は、問題集を解いていて分からなかった問題が出てきたとき、辞書代わりに使うといい。問題集に取り組む前に参考書を一通り読んでおくと、授業とはまた違ったまとめられ方がされていて頭の整理になるからオススメだよ。参考書を読むだけや、参考書の内容をノートにまとめるだけ、書き込むだけでは学力は上がらないから注意が必要だ。あくまでも問題集を使って勉強することが中心にあり、そのサポートをするのが参考書なんだ」

村川先生にスマートに回答してもらえて、それだけで僕は少し頭が良くなったような気がした。みんな読んでくれるといいなと思い、次の取材スケジュールを確認した。そのとき、トントンと背中をたたかれた――。 (続く)

ふなと・よしあき  東京大学理学部化学科卒業。学習参考書などを多数執筆。著書に「高校一冊目の参考書」(KADOKAWA)、「高校の勉強のトリセツ」(学研プラス)など。