【あらすじ】 上リ坂(のぼりざか)高校新聞部の3年生・篠田ヒロは、自分の学校がここ数年で進学実績を伸ばしている秘密を探るため、取材を始めた。定期テスト対策の方法を聞くべく、校内トップの生徒に声をかけた。

問題集と参考書を中心に勉強しよう

図書室は試験前の生徒で混雑していた。そんな中、ひときわオーラを放っているのが大岸さんだ。学校のマドンナにして、校内トップの成績。才色兼備という言葉は彼女のためにあるようなものだ。そのとき、長い髪をかき分けた大岸さんと目が合った。かしこまりながら「少々お時間いただけませんか」とお願いすると、ニコリと笑い、快く引き受けてくれた。

――大岸さんは、どんな方法で勉強しているのですか? 記憶のメカニズムを踏まえたり……?

「ええ、もちろん記憶のメカニズムを踏まえて勉強しているわよ。というより、学校の先生に言われた通りに勉強してるって言ったほうが正確かな。定期テストに向けて、市販の問題集を解くことを中心に勉強しているの。この通り、ね」

手を広げた大岸さんの前には、使い込まれた問題集が積み上げられていた。確かに、上リ坂高校では定期テスト対策として市販の問題集を解くことを推奨されていた。

「問題集に載っている問題の類題が、定期テストにも、大学受験にも出題されるって先生は言ってたから、徹底的に問題集を解いて、似た問題が出題されても対応できるようにしてるの」

――でも、問題集を自分で勉強するってハードル高い気が……。

「わかりやすい参考書って本屋さんにたくさん売られているのよ。参考書は受験生が買うものだって思っている人が多いみたいだけど、1年生こそ買うべきだわ。問題集でわからないことがあったら、すぐに開くことにしてるの」

 

――じゃあ、教科書はどうやって使っているんですか?
「教科書は授業中に先生が教える前提で作られているから、自分で勉強するために使うのにはあまり向いてないみたい。その代わり、教科書はテスト前に抜け漏れがないかチェックリストとして使っているわ。大学受験も教科書に載っている範囲からしか出題されないみたいだしね」

――そうだったんですね……。最後に、勉強するときに気をつけていることを教えてください。

「深掘りし、腹落ちさせることを徹底しているわ。納得できなかったら参考書をよく読んだり、インターネットで調べたりするの」

先生に言われたことを忠実に実行しているのが、実は大岸さんのすごいところなのかもしれないと僕は思った。そのとき、大岸さんのノートが目に入る。ちょっと見ただけなのに、一瞬で頭に残るあのノートは一体……。

「あ、ノート気になった? 美術部顧問の五歩先生に教えてもらったんだ」

美術部の先生がノートの取り方を……? 上リ坂高校はますます不思議な高校だ。大岸さんにお礼を言うと、僕は階段を上がって美術室に向かった。 (続く)

ふなと・よしあき  東京大学理学部化学科卒業。学習参考書などを多数執筆。著書に「高校一冊目の参考書」(KADOKAWA)、「高校の勉強のトリセツ」(学研プラス)など。