あるテーマを突き詰めるべく、日々まい進する研究者の仕事。国立環境研究所で地球温暖化について研究している塩竈秀夫さんに、研究活動を行う高校生へのアドバイスを、高校生記者が聞いた。(聞き手・竹内響、矢舗怜央奈 構成・小野哲史)

まねでも良い

――なぜ地球温暖化をテーマに研究しようと思ったのですか?

大学院では気象学を勉強していて、それを選んだのは昔から雲が流れるのを見るのが好きだったからです。その後、地球温暖化をテーマに扱っているこの研究所に就職したことから現在のような研究が始まりました。

――どうやって研究している?

気候モデルというコンピューターソフトを使ったシミュレーションがメインなので、研究所でコンピューターを扱っているのが基本です。気候モデルは、気温や風速などを支配する物理方程式を大量に解くことで、今後の変化を予測できたりします。みなさんがよく目にする天気予報も、気候モデルを使って得られた情報です。

――研究する上で面白いと思うことは何ですか?

地球温暖化と言っても法律や経済学など、とても広い領域の人が関わっていて、私は他分野のさまざまな研究者と一緒に研究することがとても好きです。世界が知りたいと思うことを調べて情報を出していく研究なので、やりがいがあって面白いと感じています。

――今後の研究予定は?

今、進めているのは、「パリ協定」の世界の平均気温の上昇を産業革命前の2℃または1.5℃未満に抑える目標に関して、0.5℃の差にはどのくらい効果があるかという研究です。高い目標を掲げるとそれだけコストがかかりますが、かけたコストによって得られるリターンはどれくらいあるかを調べています。

――研究者にとって必要な力や心構えは?

研究とは、誰かがまだ発表していないものを見つけて発表する作業です。ですから、うまくいかないのが当たり前。高校生ですと、自分のやっていることが誰かのまねにしか思えないことがあるかもしれません。でも、みんなそうですから最初はそれでいいと思います。経験を積んでいくと、自分がやるべきテーマや世の中が必要としている問題がわかってきて、オリジナルも出せるようになります。

――研究活動をする高校生にアドバイスを。

自分の興味あるテーマを突き詰めてほしいのはもちろんですが、それとともにいろいろな本を読んでください。例えば自然科学だけでなく、社会科学や歴史、小説でもいいと思います。その1冊が役に立つ、役に立たないということではありません。読書は蓄積で、自分の土台を高くし、発想の豊かさにつながります。

高校生が今、取り組み始めた研究が10年後(大学院卒業)も最先端の研究とは限りません。そのとき次の最先端の研究や誰も考えていないテーマを思いつけるかどうかは、その人がどれだけの教養を持っているか、どれだけ世の中に興味を持って情報を集めているかだと思います。そのためには1つのことを突き詰めつつも、いろいろなことに関心を持って吸収してほしいですね。

塩竈さん(中央)と高校生記者
 
塩竈秀夫さん
しおがま・ひでお 国立環境研究所地球環境研究センター気候モデリング・解析研究室主任研究員。武生高校(福井)卒。京都大学大学院理学研究科博士後期課程修了、博士(理学)。
 
 

※塩竈さんに聞いた異常気象の原因についてはこちらから。