消費が伸びると期待
今年の夏は最高気温が各地で40度に達するなど命を脅かす「危険な暑さ」が続く記録的な猛暑となった。同じ時期に開催される2020年東京五輪・パラリンピックの暑さ対策が重要な課題となる中、国全体の時間を夏だけ早めるサマータイム(夏時間)の導入をめぐる議論が熱を帯びてきた。
「夏時間」は長くなる日照時間に合わせて時間を標準時より早める制度で、大会組織委員会が暑さ対策の「切り札」として提案、安倍晋三首相が検討を指示した。時計を1~2時間早め、涼しい時間帯に社会活動を始めることで省エネ効果が見込まれ、勤務終了後の余暇活動が活発になり、個人消費が伸びるとの期待もある。
睡眠時間が減る懸念も
しかし、コンピューターなどのシステム変更に要する多大な労力と費用や省エネ効果への疑問が指摘され、慎重論も根強い。日本睡眠学会は「慣れるまでに時間がかかり、睡眠時間が減る」として健康への影響を懸念する。
日本では戦後の1948年から51年まで実施されたが、寝不足になるなどとして評判が悪 く、4シーズンで廃止された。
EUは廃止を検討
欧州諸国の多くは電力節約を主目的に70年代ごろまでに夏時間を採用、2009年の環境省の調査では欧米を中心に約70カ国が夏時間を採用している。だが、「想定されたほどの省エネ効果がない」「標準時を年2回前後させることで健康に悪影響が生じる」として見直しを要求する声もあり、欧州連合(EU)は存廃の検討を本格化させている。