「かるたの甲子園」とも呼ばれる第40回全国高校小倉百人一首かるた選手権大会(全日本かるた協会など主催)の団体戦が7月28日、近江神宮・近江勧学館(滋賀)などで行われた。過去最多となる364校が出場した都道府県予選を勝ち抜いた61校が出場し、浦和明の星女子高校(埼玉)が初優勝に輝いた。(文・写真 木和田志乃)

決勝戦は浦和明の星女子高校(右)と膳所高校の対戦となった

札100枚のうち50枚を使用し、自陣の札を取り切った方が勝つ。団体戦は各校の登録選手8人のうち5人が出場して同時に対戦し、3人以上勝った方が勝ちとなる。競技かるたを描いた漫画「ちはやふる」や実写版映画の人気とともに競技人口も増えている。

真剣なまなざしで札を見つめ、札が読まれるのを待つ浦和明の星女子高校(右)と膳所高校の生徒

ベスト8の壁を超える

同校は一昨年、昨年と2年連続ベスト8の成績を収めた。昨年のメンバー6人が残った今年、「ベスト8の壁を超える」を目標に掲げた。普段は週に5,6試合、夏休みに入ってからは毎日4試合、部内で団体戦をこなして体力を強化した。毎試合、お手付きをゼロにする、敵陣の札は絶対に取るなどの課題を設定。対戦相手が静かな場合やかけ声が大きい場合など、自分たちのやりにくい状況を想定して取り組んだ。また主将の松浦由さん(3年)は「試合で大事なのは終盤」だという。終盤こそスピードを上げられるように体重移動を意識して練習を積んできた。
 声かけをしてチームの士気を高め、劣勢でも押し戻すという方針で臨んだ。それが生きたのが中津南高校(大分)との対戦となった準決勝だ。実力者の松浦さんが、相手の段位の一番低い選手と当たるなど、「作戦としては一番失敗」(松浦さん)の対戦順となってしまった。しかし勝負どころで声をかけ合って粘り、ぎりぎりの接戦をものにした。
 準決勝後、部員たちは「今まで部活内で何試合もしてきた。だから今日6試合目だけど体力面も心配ない。最後まで力を出し切ろう」と確認して膳所高校(滋賀)との決勝戦に向かった。最初の1勝は膳所高校が挙げたが、その後は3連勝で優勝を決めた。

優勝が決まり喜び合う浦和明の星女子高校の生徒たち

撮った写真は700枚 

顧問の鈴木康之先生によれば、今年のチームは負けている場面でも浮き足立つことはない。3年連続出場となる主将の松浦さんと副将の丸茂晴さん(3年)の経験が部員に落ち着きをもたらしているという。それに加え部員同士、仲がいいのも特徴だ。3年生は1年生の時から毎日6人全員で写真を撮っている。嫌なことがあった日も試験期間中も欠かさず、2年半で撮影した数は700に上るという。「この積み重ねが信頼関係を築き、団体戦にも生かされている」と鈴木先生は見ている。

決勝前のミーティングでは「やるしかない」と気持ちを高めた

結果は以下の通り
優勝    浦和明の星女子高校(埼玉)
準優勝    滋賀県立膳所高校(滋賀)
3位    大分県立中津南高校(大分)
4位    海城高校(東京)

【浦和明の星女子高校百人一首部】
2010年創部 部員数69人(3年6人、2年5人、1年6人、中学生52人)。平日放課後(夏季は6時、冬季は5時30分まで)と月に1回のみ土曜日に活動。「かるたの甲子園」の出場は今年で5回目。過去ベスト8に3回進出。