決議案を作成するため大使同士で積極的に意見を交わす (11月11日、校内での総会)

大阪・関西創価高校の3年生全員が、世界各国の大使になりきり、国連を模した会議で「決議」の採択を目指す「模擬国連」を行った。飢餓撲滅のための食料流通システムの構築をテーマに議論を重ねてきた。(文・写真 木和田志乃)

92カ国で政策考え

昨年度から始まった取り組みで、今年は349人が3、4人ずつ92の国に分かれ、「大使」になった。飢餓をなくす食料流通システムをつくるために、多くの国が合意する決議の採択を目指した。

テーマは運営を担当した模擬国連部のメンバーが中心となって決めた。昨年度の模擬国連で食料問題解決のための農業分野における国際協力について話し合われた成果と「世界中の人々に関わり、飢餓を失くすためには流通システムの構築が必要だから」このテーマにしたと議長を務めた部長の佐藤美樹さんは説明する。

クラスごとに東アジア、南米など地域が割り当てられ、その中から担当する国をくじで決めた。生徒たちは担当国の抱える食料、流通の問題点や現状について、本やインターネットなどで調べ、各国1、2個の政策を立案した。

大使になりきり主張

クラス討議を経て学年全員で議論する「総会」は2日間にわたって行われた。初日は
各国の現状や政策などを発表し、インフラの整備、低温流通システムの構築などの観
点から検討し、決議案の原案を数個作成した。
 総会の2日目は、決議の採択を目指し、討議した。「(インフラが発達しており、経済力があるため)先進国に流通を請け負う会社を設立すれば、食糧が円滑に分配できる」という北中米諸国の提案に対して、南アフリカやニュージーランドが「特定の国の利益につながるのではないか」と指摘。対して米国は「食料の分配システムを確立するのが目的。特定の国だけの利益にはならない」と説明するなど、各国の事情を踏まえた議論が交わされた。

決議案の提出には20カ国以上、採択には参加国の4分の3にあたる69カ国以上の賛成が必要だ。提出を目指す国の大使は、賛同していない国と交渉し、話し合いながら決議案を作り上げた。

熱心に話し合う生徒たち

「解決策一つでない」

模擬国連部の部員が、討議の発言内容や交渉の際のリーダーシップなどを見て、5カ国を「ベストカントリー賞」として表彰した。

受賞したシエラレオネ大使の本房由香さんは「シエラレオネは紛争の影響で国土が荒廃し、とても貧しい。支援を受けても(他国に)返せるものがなく、初めはどこまで発言していいか分からなかったが、議長から『国連ではどの国も対等』と諭されてから、積極的に主張し、議論をリードできた」と話した。議長を務めた模擬国連部部長の佐藤美樹さんは「国が違えば抱える問題も違い、解決策は一つではないと学べた」と振り返った。

一つのテーマを真剣に考え抜いた
【関西創価高校】
2015年SGH指定。地球的課題に「環境・開発・人権・平和」の4つのテーマからアプローチし、創造力と対話力を持ったグローバルリーダーを育成。