「ジョジョの奇妙な冒険」シリーズなどで絶大な人気を博する仙台市出身の漫画家・荒木飛呂彦さんが8月1日、第41回全国高校総合文化祭(みやぎ総文2017)の美術・工芸部門に参加した高校生に向けて講演を行った。各都道府県から選ばれた絵画や彫刻作品など約400点の中から20作品を選び、批評。「こんなに一生懸命に描いている高校生がいるのはうれしい。夢中になって(作品を)見た」と話した。(文・写真 野村麻里子)
「自分にしか描けない絵」子どものころから目指していた
仙台で少年時代を過ごしたという荒木さん。父母が漫画を好きで、永井豪、手塚治虫などの漫画を読む傍ら、美術全集や画集も見ていたという。同じ人間が書いているのに、人によって全部違う描き方になることが「ネス湖のネッシーや空飛ぶ円盤みたいな謎(に感じる)」と表現する。
子どものころから目指していたのは「自分にしか描けない絵や漫画」。遠くから見てもどのキャラクターなのか一目でわかるような作品作りを大切にしているという。シルエットの重要性も指摘。空条承太郎のキャラクターデザインは真っ黒に塗ってもわかるようにしたと明かした。「上手にしようとか子どもにウケるかなというのは二の次です」
ジョジョ立ちとの共通点を見出す
今回の美術・工芸部門の約400作品から20作品を選ぶのに、作品集を見るのは「すごく楽しかった」。自身の高校時代よりもレベルが高いと感じたという。
宮城県の生徒作品(写真)は、一見地味だが実は計算されていて、こちらを振り返るポーズをする女子生徒のキャラクターが印象深いと指摘。「ジョジョの場合もポージングが重要。リアリティーとファンタジーという相反するものを同時に読者に与えるのがポージングの狙い。このポージングした女子高校生のキャラクターは、1カ月以上覚えていました」とコメント。ジョジョシリーズの登場人物のポージング「ジョジョ立ち」との共通点を見出していた。
毒々しい色使いを絶賛
埼玉県の生徒作品(写真)では、サイケデリックな色使いを絶賛。「赤と緑など対照色は、僕らはあまり使わないが(この作品では)あえて使っていて。この毒々しさ、ずっと見ていたい。奇妙な雰囲気が素晴らしい」と話した。
ジョジョのキャラに住まわせたい
20作品の中でも「印象が強い、気に入っている」としたのは、神奈川県の生徒の作った立体デザインで、紙で家を表現した作品。「どうやって生活するのかなと想像するのが好き。ストーリー性がある作品で、ジョジョのキャラクターに住まわせたい」と話した。
扉は開いている 辞めないで描き続けて
選んだ作品一つ一つに真摯に、にこやかにコメントをしていった。「今回、作品を見てみていつからこんな発想やテクニックを身に着けるのだろうと思った」と感嘆した様子。「もしいま高校生だったら、ライバルって思っちゃうのかなあ。恐るべしって感じでした」と話した。
会場中の高校生には「描き続ける大切さ」を伝えた。「描き続けていると、絵のほうから教えてくれることがある。例えば自然の営み、植物がどう成長していくかなど、描いていくと分かる。物理現象までも絵を描いていると分かって、量子論も絵の感覚で理解できる。みんなもう扉を開いているから、ここでやめないでほしい。行き詰ったと思わないで描きながら学んでほしい」と熱いメッセージを送った。