東日本大震災被災地からの報告を行う雁部君(中央)ら(11月26日、土佐西南大規模公園体育館アリーナで)

将来の防災の担い手となる高校生による国際会議「『世界津波の日』高校生サミット in 黒潮」が11月25、26の両日、高知県黒潮町で開催された。日本と世界30カ国の高校生約360人が、自然災害から生き抜くために高校生世代ができることについて意見交換した。
(文・写真 藤川満)

減災のためのプラン発表

黒潮町は、南海トラフ巨大地震における津波が国内最大の34メートルと想定される。地震・津波に対する取り組みを積極的に行っており、津波防災の意識を共有しようと世界の高校生を招待した。分科会での討議のほか、会場周辺にある津波避難タワーの見学や避難訓練などのフィールドワークも実施。発表や生徒同士のコミュニケーションは、基本的に英語で行われた。

分科会は「自然災害を知る」「自然災害への備え」「自然災害からの復興」というテーマごとに行われた。「高校生に何ができるのか」を考え、それぞれがアクションプランを提案。「高校生が小さい子どもたちに災害教育をする」「学校中心のコミュニティーをつくる」「SNSで情報共有」など、減災のためのプランを発表した。

つらい被災経験を語る

東日本大震災被災地からの報告として、被災体験の語り部活動をしている宮城・石巻高校の雁部那由多君、津田穂乃果さん、宮城・石巻西高校の相澤朱音さん(いずれも2年)が登壇。雁部君は目の前で5人が津波に流されていくのを目の当たりにして、何もできなかったつらい体験を生々しく語った。続けて「多くの人々に体験談を語ることで、後悔しない生き方をしたい」と語り部活動への思いを述べた。

最後に、自然災害から一人でも多くの命を守るための努力を決意した「黒潮宣言」が採択された。議長の一人で、黒潮町にある大方高校に通う今村琳花さん(1年)は「いろんな国の人に出会えて良かった。今後、黒潮宣言が使われる機会があれば、参加していきたい」と充実感をにじませつつ抱負を述べた。

 MEMO  世界津波の日
 1854年の旧暦11月5日に起きた安政南海地震の際、和歌山県の庄屋・浜口梧陵が稲わらに火をつけ、村人を高台に導き大津波から村民を救った逸話から日本が提唱。津波の脅威と対策への国際的な意識向上のため、国連によって採択された。