学校や病院、保育園。最近では高齢者施設でも活躍しているのが管理栄養士だ。このような施設で働く管理栄養士は、給食を提供する対象者に合わせた栄養、調理法で献立を考え、調理や配膳に携わることもある。高齢者施設で経験を積みながらスポーツ選手の栄養指導者を目指す生方春菜さんに話を伺った。
チームワークが必要な給食サービスのチームリーダー
̶̶現在のお仕事について教えてください。
給食サービス事業を行う企業に入社し、病院が併設された高齢者向け施設の食堂に店長として勤務しています。365日3食を提供する仕事で、実際に調理場に立ちながら、店長として従業員をまとめる役割も担っています。
同時に、高齢者向け施設を経営するクライアント企業とのコミュニケーションも必要で、ご意見をいただいては改善する努力をしています。たとえば「肉が固いという意見があった」「この献立は人気がない」などと話をいただいた時には即対応し、可能な範囲で改善するようにしています。
また、以前オリンピックやアジア大会の期間中に開催国に滞在し、日本人選手に食事を提供する業務を経験したこともあります。将来はスポーツ選手の栄養指導などに関わるために、まず現場で経験を積もうと就職した会社ですが、思わぬタイミングでスポーツ選手を支える一端を担うことができました。
栄養と衛生、効率も考えた 大量調理の実習で多くを学ぶ
̶̶管理栄養士を目指した理由を教えてください。
管理栄養士になろうと決めたのは、高3の夏でした。3歳から始めた水泳で、選手としてオリンピックを目指していましたが、思うように記録が伸びず、今度は選手を支える立場でスポーツに関わりたいと思ったからです。
̶̶大学選びの基準は何でしたか?
専門性の高さです。女子栄養大学は栄養学部のみの単科大学で、より専門性の高い学びが得られると考えて志望しました。ずっと水泳に没頭していたので、勉強を始めたのは高3の夏から。まわりからは無理だと言われましたが、明確な目標があったので、小論文対策をしっかり行って公募推薦入試で合格することができました。
̶̶大学時代はどんなことを学びましたか?
生化学など理系の科目には苦戦しましたが、さまざまな科目をバランスよく学ぶことができるので問題ありませんでした。特に印象に残っているのは、「給食経営管理実習」。学校や介護施設などを想定した大量調理の実習です。グループに分かれて何カ月もかけて計画を立て、調理したものを他グループと試食し合って評価します。限られた時間の中、チームで作業するのは大変なことでした。安全や衛生に気を配りながら、効率のよい人の動きも考えなければなりません。少量料理とは違う調理法や給食現場の雰囲気を、実践的に学ぶことができました。
̶̶今後の目標は?
公認スポーツ栄養士の資格を取ること。スポーツの現場で、より具体的なサポートができる力を身につけたいと思っています。そのためにも、栄養や料理に関する引き出しをもっとたくさん持てるよう勉強を続けたいですね。また、現場では他の管理栄養士と一緒に仕事をする機会はあまりありませんが、自社の栄養士会の集いを通じて、後輩の育成にも力を入れたいです。
̶̶最後に高校生にメッセージをお願いします。
私の高校時代は部活中心の生活で、3年生の夏まで受験に関することを何もしてこなかった
ので苦労しましたが、早い時期に自己分析をして、自分のやりたいことや向き不向きを考える時間を持つとよいですよ。ただ私の場合、部活を頑張ったことで忍耐力が身につき、社会人として役立っています。また、管理栄養士を目指すのに、料理は苦手でも心配いりません。わたしも高校時代は料理が苦手でしたが、在学中の調理実習などを通してきちんとできるようになりました。ぜひ恐れずに挑戦してください。