高校生の本音を政治家にぶつけよう。高校生有志の団体「僕らの一歩が日本を変える。」は3月28日、衆議院議員会館(東京・永田町)で、高校生107 人(新1年生含む)が与野党の国会議員と討論するイベントを開いた。テレビで見られない政治家の素顔を知る機会にもなったようだ。(文・西健太郎、写真・幡原裕治。学年は取材時)
 
「僕らの一歩」は、政党などの後ろ盾のない高校生有志11人による団体。10代の政治への関心を高めることなどを目指している。中学3年から高校3年まで約250人以上の応募者から選考に通った25都道府県の107人が参加した。国会議員は会議の合間を縫って34人が出席した。
 
討論はネット選挙、少子化、日中関係など、テーマごと10班に分かれて実施。高校生同士でどんな課題があるかを話し合ったうえで、議員を交えて解決策をまとめた。
 
「深刻ないじめをなくすための政策」を話し合った班では「いじめへの対処を先生の評価に結び付ける」などの意見が高校生から飛び出す。中高一貫校の先生から政界に転じた宮川典子衆議院議員(自民党)が同席し、「教師への罰をただ厳しくすれば隠蔽ぺ いが起きるのでは」「家族の意向で自殺が伏せられることもある」など、現場の実態を示して議論を広げた。班の高校生たちは①法整備して監視機関を導入する②教師の責任と権利を明確化する――などの案を打ち出した。
 
勝間翼君(東京・岩倉高校3年)は「議員の方はデータを示して話してくれたので勉強になりました」と話した。宮川議員は「高校生は社会問題について前向きに、多面的に考えようとしていた」と振り返った。
 
「東日本大震災からの復興に若者がかかわる方法」を議論した班は、学校できっかけをつくろうと、被災地の学校の姉妹校を国内に設ける案などをまとめた。「これからの社会を生き抜くための高校教育」を考えた班は「偏差値を一時的にでも廃止する」ことを提案した。
 
「復興」班に参加した小野間瑞季さん(東京・頌栄女子学院高校3年)は「議員さんは積極的に話を聴いてくれた。イメージが変わりました」と話した。別の班の山本将也君(兵庫・長田高校3年)は「学校生活ではできない、政治の議論をできたけど、議員にはのらりくらりとかわされてしまった」と苦笑した。
 
討論の前に8党の幹部らが高校生にメッセージを送った。石破茂・自民党幹事長は「皆が国を治める立場でものを考えてこそ、本当の国民主権が実現する。いろんな本を読んで学んでほしい」と助言した。細野豪志・民主党幹事長は「目の前の問題だけでなく、もっと先を見た政策を高校生につくってほしい。今の政治家には、それが難しい」と語った。小沢一郎・生活の党代表は「自立心と大きな志を持ってください」と呼び掛けた。
 
昼食も一緒 本音全開
 
 当日は高校生と議員が昼食も共にした。議員はテレビで見せる険しい表情とはうってかわってリラックスした表情。高校生は目を輝かせて議員の話に聞き入った。
 
ある野党議員は高校生に「落選した時は何をしていたのですか?」と質問されると、「選挙区内をひたすら1軒、1軒訪問していた。生活費はバイトで稼ぐ。もー大変。子どもの塾をやめさせて、旅行も外食も行けなくなったけれど、目標に向けて家族が一つになった」と苦労を明かした。
 
「政治家の面白いところは?」と問われた津村啓介衆議院議員(民主党)が「この仕事をしていないと会えない人に会えたときかな。今日もすごく面白い」と話すと高校生も納得した様子。議員は続けて「政治は○×問題のように答えが一つじゃない。どんな政策でも誰かが泣いている」と、難しさも語った。
 
「TPPで気を付けないといけないのは……」「児童虐待問題に取り組みたくて政治家になった」など、取り組んでいる政策について解説する議員も多かった。