人を助ける仕事がしたい……。そんな思いから医療の仕事に憧れる人は多いのではないでしょうか。医療の仕事というと、患者と直接触れ合う機会の多い医師や看護師などをイメージしがちですが、実際には多種多様な専門家(医療従事者)が連携して患者の治療にあたっています。こうした専門職にはどんなものがあり、どうしたらなれるのか。高齢化社会が進む日本では、今後さらなる需要がある分野です。ここでは、意外に知られていない医療従事者の仕事についてその概要を紹介します。進路選択の幅がぐっと広がるはずです。

医療の現場では、一人ひとりの患者に対して病気の治療だけでなく予防やリハビリテーション、介護などに関わる多種多様な専門性が求められるケースが多くなっています。また近年、医師・看護師不足は深刻な社会問題。こうした課題に対応するため、医療機関などでは医師主導のトップダウン型だったこれまでの医療に変わり、より効率的・効果的な「チーム医療」を取り入れる動きが広がっています。

チーム医療とは、医師や看護師はもちろん、理学療法士、作業療法士、視能訓練士、言語聴覚士、管理栄養士、薬剤師、鍼灸師など医療に関わるさまざまな専門知識・技術をもつスタッフが、一人ひとりの患者の状態に合わせてチームを作り、より質の高い医療を提供すること。これまで患者と接することの少なかった薬剤師や管理栄養士がチームの一員に加わるなど、各医療機関でさまざまな試みが行われ、効果を上げています。また最近では社会福祉士などの福祉専門職がチーム医療に参加することも多いようです。

こうしたチーム医療の広がりで、医療従事者はこれまで以上に大きなやりがいを感じられるようになっているのです。

職種によっても異なりますが、医療従事者になるには、大学や専門学校などの養成機関を修了後、国家試験に合格して資格を取得しなければならない場合がほとんどです。職種によっても異なりますが、国家試験の合格率は60~90%程度。資格取得後は病院や介護老人保健施設などに勤務することが多いようです。

それでは大学と専門学校、どちらに進学するのがいいのでしょうか。医学全般および専門領域を学ぶ授業があること、病院などでの臨地実習に多くの時間が割かれることはどちらも同じ。とくに専門学校のカリキュラムは国家資格の取得に特化しており、そのため修業期間が大学より短くなる職種もあります。

一方、専門分野はもちろん、文学や経済、外国語、情報処理技能といった専門以外の科目を学べるのが大学の魅力。専門知識も大切ですが、幅広い教養を身につけることができるというメリットがあります。また、人と関わる仕事にはコミュニケーション能力が必須です。患者はもちろん、患者を一緒に支援するスタッフとの円滑なコミュニケーション能力を身につけるための授業を設置する大学もあります。クラブやサークル活動に参加し、学生生活をより楽しめるのも大学ならでは。そういったことすべてが、医療従事者に不可欠な“豊かな人間性”を育むことにつながるのです。