ミーティングの様子。チーム内で積極的にコミュニケーションを取るよう意識している

 

精神障がい者の就労支援事業や発達障がい児向けの学習塾などを展開する株式会社LITALICO(リタリコ)は、従来「福祉」として扱われてきた分野を「ビジネス」として展開する。同社で大学時代からインターンシップ生として働き、現在は新規事業の立ち上げに携わるのが玉谷祥子さんだ。
(山口佳子)


障がいのない社会を

 うつ病など精神に障がいを抱える人の中には、働きたいという意欲があっても1人で活動することが難しい人もいる。LITALICOは、こうした人たちを対象に、ビジネススキルなどの講座を提供したり、就職活動支援や就職後のサポートなどを行っている。

 企業として掲げるビジョンは「障害のない社会をつくる」。従来、障がいとされているものも、その人を取り巻く環境が変われば障がいではなくなるという考え方だ。

 現在、新規事業開発部のマネジャーを務める玉谷祥子さんが、同社に出会ったのは、大学3年生の時。同社は「ビジネスで社会課題を解決する」というポリシーを掲げていた。

 上智大学進学時からビジネスに関心を持ち、学内外で社会学を学んでいた玉谷さんも「ビジネスで社会を変えたい」と考え、就職活動に臨んでいた。「正直に言うと、『障がい』という分野には、最初は興味が持てませんでした」と振り返る。

障がい者向けサービスの向上を

 しかし、大学4年生になって同社のインターン生として業界をリサーチしてみると、特有の課題があると分かった。

 例えば、学習障がい(LD)の場合、文字情報を目から得ることが不得意でも、耳から情報を得られれば、文字を音声に変換する機器を利用して障がいを減らせる。だが、1台数十万円と高価で、個人では簡単に購入できない。「障がい者向けのサービスや商品は高価でデザイン性も低いものが多い。今まで競争がなかったこの分野にもビジネスのフレーム(枠組み)を取り入れたら、サービスの質も利用者の満足度も向上できる。社会を変えられると思い、入社を決めました」

現場の声が生む新事業

 ちょうどそのころ、社内では新規事業として発達障がい児向けの学習塾「Leaf」開設の準備が進められていた。就労支援事業で関わってきた精神障がい者から「幼いころから生きづらさを感じていた」という話を、現場の社員が聞いたことがきっかけだった。

 玉谷さんも、インターン生として営業を担当。学習塾の資料を持参して、行政機関や特別支援学級などを回った。「当時(5年前)はまだ、民間企業が福祉分野に入りづらい部分があった時代。門前払いを受けながらも、自分たちの理念を伝えたいと頑張りました」

 現在、玉谷さんが取り組んでいるのは、保護者向けの教育事業。これも、発達障がい児の学習塾を運営する中で「子育てを学ぶ機会が欲しい」という保護者の声から生まれた。

 事業の一環として、今年4月には、「Conobie(コノビー)」という子育て情報サイトをスタートさせた。現在は、さらなる事業展開を模索中。「志をともにする仲間と仕事をすることが、何よりも楽しい」と玉谷さん。「社会を変えるというビジョンに、仲間と一緒に真っすぐに向かっていきたい」

 
 

企業データ 
株式会社 LITALICO
 2005年、仙台市で創業。08年に障がい者就労支援事業「WINGLE」を開始。14年には、「利他」と「利己」を組み合わせた造語「LITALICO」に社名を変更。学習塾事業「Leaf」、ものづくりで子どもの個性を伸ばす「Qremo」など、日々の事業の気付きから新しい事業が生まれている。従業員数は1025人(15年4月現在)。本社は東京。求める人材は「自ら行動できる人」「多様性を受け入れられる人」。企業理念は「世界を変え、社員を幸せに」。