東京・渋谷教育学園渋谷高校の将棋部をサポートするマネジャーは、なんとプロ棋士だ。竹俣紅さん(2年)は、プロとしての対局と並行して部活の仕事や部員への技術指導をこなす。真摯に将棋と接する姿勢は、ほかの部員にとって大きな刺激になっている。(文・茂野聡士、写真・幡原裕治)
休眠状態の部を「復活」
将棋部が活動する教室から、賑やかな声が聞こえてくる。その中心にいるのは、高校生ながらプロ棋士の肩書を持つ竹俣さんだ。
プロであるため、高校生の大会には出場できない。それでも、大会への登録手続き、部員の応援など、マネジャーとしての活動に精力的に取り組んでいる。
同校は中高一貫校で、竹俣さんは中学1年から将棋部に所属。当時は、ほとんど活動休止の状態だったため「ちょっとガッカリした」という。しかし「自分が運営して盛り上げていこう!」と一念発起し、文化祭で将棋部のブースを出すなど、将棋の面白さを伝える発信役を務めるようになった。
その結果、校内で将棋部の認知度は高まり、中学部の部員が増えた。現在は、中学部10人、高校部10人の計20人が活動している。「将棋の強さ、学年に関係なく、和を大事にしているんです」(竹俣さん)
部の仲間に救われる
部活中の対局では、楽しそうな表情を浮かべながらも、まなざしは真剣だ。部長の長澤正高君(2年)は、プロの強さを体感している一人だ。
「どんな手を指しても、全て読まれてしまいます。でも、竹俣さんに教わった戦法で優位に戦えた対局もありました」
部員の棋力向上は、竹俣さんも感じている。
「最初はみんな初心者でしたが、一緒に楽しみながら指すことで棋力が伸びています」
部員の成長を助ける竹俣さんだが、一方で部活の存在に救われることもある。
「部活では、みんなが楽しそうに将棋を指している。公式戦で負けて落ち込んでも、ここに来ると気持ちが切り替えられるんです」
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- 【たけまた・べに】
- 1998年6月27日生まれ、東京都出身。小学生のころに将棋を始めたきっかけは「もともと漢字が好きで、駒に漢字がいっぱい書いてあったから」。2010年、小学生として史上初めて女流王将戦の本戦に進んだ。中学生だった12年7月に女流棋士の資格を日本将棋連盟に申請。同年10月に女流2級。