金沢泉丘高校(石川)新聞部は、全国高校総合文化祭の新聞部門で最優秀賞を受賞するなど、全国屈指の強豪だ。取材の流れや紙面作りのこだわりを聞いた。(文・木和田志乃、写真・学校提供)

本紙を年間5回、速報を約20回発行

金沢泉丘高校新聞部は、カラータブロイド判の本紙「いずみの原」を年5回、B4サイズの速報を約20回発行している。

左から元副部長の大友涼平さん、現部長の堂宮綾乃さん、元部長の中川明花里さん

本紙で取り上げるテーマは、能登半島地震などの時事問題から、文化祭などの学校行事や今年一番印象に残った学校のニュース、受験のトピックまで多岐にわたる。MBTIに絡めて行ったアンケートも掲載するなど、高校生世代にトレンドな話題も取り上げている。

今年7月に発行した本紙「いずみの原」

速報版の「いずみの原速報」は、大会結果やゴシップも含めた「ちょっとした話題」を扱う。年間約20回、不定期に発行する。速報版の内容は比較的自由に決められ、金沢マラソンに出場した先生を特集した号もある。

<年間スケジュール>

4月 新入生歓迎合宿、本紙4月号発行(新入生向け学校紹介など)
7月 本紙7月号発行 8月 全国高校総合文化祭
9月 石川県高校新聞コンクール
10月 全国高校新聞年間紙面審査賞、本紙
10月号発行(文化祭や夏季大会の結果など)
12月 本紙12月号発行(修学旅行特集など)
2月 本紙2月号発行(共通テストなど受験情報) その他、随時速報発行

【本紙発行に向けた流れ】約半年かけて制作

本紙は、基本4面。だが、7月下旬の終業式ごろの発行を目指す7月号は16面と、ボリュームが多い。企画・特集8面、学芸・研究4面、そのほか身近な話題を集めた4面構成で、約半年をかけて製作される特別な号だ。

準備は、前年度の2月、全員参加の企画会議から始まる。3日間かけてじっくりと話し合っていく。「まずは時事問題や自分の趣味に近い分野や高校生に身近な話題など、自分の特に興味のあるものを出し合います」(3年、元部長の中川明花里さん)

部員は、オリジナル企画を付箋に書いて、模造紙に貼る。「うちの部が伝統的にやってきている方法です。付箋を見ながら『これ、いいね』と推薦しあって、紙面構成も考えて面ごとに企画を決定していきます」(3年、元副部長の大友涼平さん)。

【本紙発行に向けた流れ】面の担当者が取材先を選定

企画が決まったら、面ごとに担当者が割り振られる。取材は3月から4月にかけて実施。「面の担当者が中心となって取材先を選び、アポを取って取材に行き、5月からは文字数に合わせてひたすら記事を書いていきます」(大友さん)

3月に奥能登で実施したボランティアを取り上げた面。自らの足で赴き、復興の現状を直視した

企画・特集面では、今年は「能登半島地震からの復興」をテーマにした。ジンベイザメを失った七尾市の「のとじま水族館」や、珠洲市にある馬の放牧場を訪ね、被災後の再建を取材したり、部員が輪島でボランティアに参加した様子を取り上げたりした。学術・研究面では、白山市のジオパークや北陸新幹線の延伸について取り上げた。

【本紙発行に向けた流れ】発行前の6月は大忙し!

発行を1カ月後に控えた6月は、最も忙しくなる時期だ。記事の執筆、文字数調整、レイアウトや写真整理を同時並行で進めていく。6月中旬には印刷業者に原稿を渡し、印刷・デザインの調整を依頼。校正は約3回実施し、印刷は発行日の3日前に行う。

<本紙発行に向けた流れ>
2月 企画会議。テーマと企画を決定。
3月~4月 取材準備・取材実施。
5月 取材・記事執筆。取材と並行して、記事の執筆を開始。
6月 記事執筆・レイアウト・校正。
6月中旬~7月 印刷業者との校正作業。
7月下旬  発行。終業式を目安に全校生徒に配布。

【1日のスケジュール】活動時間は各自自由

平日の活動の流れを、中川明花里さん(3年、元部長)に聞いた。活動時間は各自の裁量に任され、担当している企画の進み具合により、早く終わる日もある一方で、「締め切りが迫ってくると帰宅後に執筆する時もありました」と振り返る。

<中川さんのある平日のスケジュール>

16時15分 部活開始。開始・終了時間は目安。「早く始めても早く終わっても良い」など比較的自由。
16時15分~18時30分 取材メモをもとに、パソコンで記事を執筆。
18時30分 部活終了

取材メモをもとに記事を執筆したり、写真データを整理したりする。執筆の際は行数を考慮しながら、紙面のレイアウトも組む。記事が完成に近づくと、部員同士で校正作業も行う。

取材は主に休日に行う。総体や新人戦の取材では主に写真撮影。出場生徒へのインタビューは後日改めて行う。夏休みなどで多くの大会やコンクールの日程が重なる場合には、1日に複数の会場を回って取材。会場が遠方の場合は、早朝より活動する。

和気あいあいとした様子で企画を立てる
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堂宮綾乃さん(2年、現部長)が「自由に活動している」と語る通り、部員一人ひとりが企画から完成まで主体的に関わり、質の高い紙面を生み出している。

<中川さんのある休日のスケジュール>

9時~9時45分 ESSのコンテスト取材・写真撮影
9時45分~10時30分 
次の取材先に移動。
10時30分~12時 卓球の大会取材・写真撮影
12時~13時 学校に移動
13時~14時 撮影した写真の整理係への受け渡し
14時 解散・帰宅

【上達のコツ】紙面の完成後のイメージを思い描く

担当者は、完成後の紙面のイメージ、特にメイン写真の扱いを頭に描きながら取材を行う。例えば、のとじま水族館のジンベエザメ飼育展示の再開を取材した記事では、ジンベエザメと部員が1枚の写真に入る構図を意図的に狙い、能登半島地震からの「復活」を視覚的に表現した。

「のとじま水族館」を取り上げた面。ジンベエザメの写真が目を引く

顧問の谷口豊先生は「担当者は最初からイメージを浮かべて、狙って撮っていると思います。写真をどのように撮るか、事前の作戦と準備が大事」だと強調する。

【上達のコツ】興味を引く見出し作成にこだわり

一目で記事の要点が理解でき、読者の興味を引く見出しを作るため、見出しも工夫する。主見出しでは面全体で一番に訴えたいメッセージを、脇見出しで記事の内容を説明している。2種類の見出しの役割を分けて、わかりやすくする。

「谷口先生には何度も修正されます。何案も出して自分たちのベストを作れるように頑張っています」(3年、元副部長の大友涼平さん)。

金沢泉丘高校新聞部

金沢泉丘高校新聞部

1948年創部。部員23人(3年生9人、2年生8人、1年生6人)。「星は空に輝いているんじゃない、星は私たちの周りに輝いている」をモットーに身の回りの「スター」を見つけ、ニュースを届ける。全国全国高校総合文化祭「新聞部門」で最優秀賞を4度受賞。