2016年度大学入試結果分析 河合塾に聞く
大学や学部を選ぶ際に一番大切なのは「自分は何を学びたいか」。とはいえ、入試が競争である以上、最近の動きもしっかりおさえておきたい。2016年度入試結果のポイントと17年度入試を受ける高校生へのアドバイスを河合塾に聞いた。
大卒就職の改善が文系学部人気呼ぶ
国公立大学の志願者総数は、前年とほとんど変わらなかったが、学部系統ごとの志願者数をみると、文系学部の志願者が増えた。定員の多い前期日程入試について前年と比較すると(表)、「文・人文」「社会・国際」など、文系の学部系統で軒並み志願者数が増え、志願倍率も上がった。一方、理学系や工学系などは減った。河合塾は、要因として大学生の就職状況の変化を指摘する。教育情報部部長の富沢弘和さんは「景気が悪いと、資格がとれる医療系や、卒業後の進路に直結しているイメージのある理系の人気が高まります。それが、就職状況の急速な回復で、昨年から文系学部の人気が高まっています」と話す。とはいえ、現在の高校3年生が大学を卒業するのは5年後。その頃の就職状況は分からない。学部選びの際は、自分の興味・関心を優先させたほうがよいだろう。
昨年から新教育課程に移行し、センター試験の理科の出題範囲が広くなった影響もみられるという。東京農工大学など、受験に必要な科目を増やした大学の志願者の減少もみられたというが、富沢さんは「(幅広い科目を)きちんと勉強しておけば受験のチャンスが広がる」と指摘する。
教育学部などの再編で定員や志願者数に変化
学部再編の影響もみられた。中でも教育学部の教員養成を主目的としない「総合科学課程」(ゼロ免課程)の相次ぐ廃止(今春は15大学)とそれに伴う学部の新設や再編だ。新学部は「国際」「地域」を冠した学部が多い。千葉大学国際教養学部のように人気を集めたところもあれば、倍率が低かった大学もある。学部の再編で他学部の定員も変わった場合もある。また、新学部の入試の科目数が多い場合、近隣の公立大に受験者が流出したケースもあったという。
個別の大学では、神戸大学、九州大学で志願者が増えた。両大学では昨年は志願者が減っており、その反動とみられる。逆に、名古屋大学の減少は、昨年志願者を増やした工学部が減少した影響という。いわゆる「隔年現象」だ。
私立大は志願数増加複数学部出願しやすく
私立大学の入試結果をみると、河合塾の集計(344大学、4月22日時点)では、のべ293万人(前年比104%)が志願した。私立大は、一度の試験で複数学部を受験でき、受験料を割り引くなど、一人あたりの出願数を増やす仕組みが広がっていることも影響しているという。国立大と同様、昨春に続き文系が志願者を増やした。「法・政治」(前年比111%)、「経済・経営・商」(107%)、「文・人文」(104%)などで志願者を増やした(表)。理系では、「工学」(104%)は増やしたが、「理学」(97%)、「農学」(96%)は減らした。
17年度は大阪大で新入試英語の外部試験利用拡大も
17年度入試はどうなるか。国立大では教育学部のゼロ免課程が5大学で廃止される。私立大では、医療系・国際系の学部・学科新設が多く予定されている。入試改革としては、大阪大学が後期日程を取りやめ、推薦・AO方式の「世界適塾入試」を始める。英語で外部試験のスコアを利用する入試の広がりも注目される。富沢さんは「志願者の増減は『隔年現象』もあるので、前年の入試結果を気にして志望変更するのはよくない。やりたいことを第一の基準にして、志望校を諦めずに勉強することが大事です」と話している。