奨学金は「自分には関係がないと思ってる」「難しそうだから、調べるのは後回ししてる」という声が編集部に寄せられた。利用する人が最も多い日本学生支援機構の奨学金について、ファイナンシャルプランナーの久慈拓也さんに種類や申し込み時期を、わかりやすく解説してもらった。(野口涼)
「もらう」と「借りる」の二種類がある
―「日本学生支援機構」の奨学金にはどんな種類がありますか?
もらえるお金の「給付型」と、借りるお金の「貸与型」があります。貸与型には返すときに利子の付かない「第一種奨学金」、利子の付く「第二種奨学金」、同じく利子が付き、第一種奨学金、第二種奨学金の1回目の振込に上乗せされる「入学時特別増額貸与奨学金」の3種類があります。
給付型奨学金は、返済する必要のない「もらえる」奨学金です。学生にとってはありがたい存在ですが、その分、利用できるかどうかの判断基準が「借りる」奨学金より厳しくなります。
―第一種奨学金、第二種奨学金の違いを教えてください。
第一種奨学金は、世帯の収入が多いと借りられません。一方、第二種奨学金は第一種奨学金よりも収入基準がゆるく、借りられる金額も多いです。
高校時代の成績で判定
―無利子の「第一種奨学金」は、成績が良くないと借りられないですか?
「第一種奨学金」の採用基準は、「高校の成績の平均が5段階評価で3.5以上」であることです。
なお、所得が低いなどの理由で住民税が課税されない世帯に属する生徒は、「3.5以上」の成績基準は適用されません。学ぶ意欲を認められれば対象になります。
予約採用では進路に関わらず「3.5以上」の成績が求められますが、在学採用かつ専門学校進学の場合は「3.2以上」と多少ハードルが下がります。
―申し込み時期によって判定に使われる成績は変わりますか?
高校3年時に申し込む場合は通常高校1~2年の成績で、大学1年次に申し込む場合は高校最後の2年間の成績で判定されます。
第二種奨学金の成績基準は「ほぼ全員がクリア」
―利子つきの「第二種奨学金」について成績基準は?
第二種奨学金の成績基準は三つあり、そのうち一つを満たせばOKです。
―基準をクリアできるか心配になる高校生もいそうです。
三つのうちの「大学等における学修に意欲があり、学業を確実に修了できる見込みがあると認められる」という基準は進学希望者であれば当てはまらない人はいないと思いますので、ほぼ全員がクリアかと思います。
「シミュレーター」で収入基準を確認
―収入基準はありますか?
第一種奨学金、第二種奨学金とともにあります。日本学生支援機構の「進学資金シミュレーター」(https://shogakukin-simulator.jasso.go.jp/)で該当するかどうかおおよそ確認できるので、ぜひ使ってみてください。
借りる金額は自分で選ぶ
―第一種奨学金は毎月いくら借りられますか?
第一種奨学金は最低2万円、最高6万4000円です。進学先が大学かそれ以外か、私立か国公立か、「自宅」「自宅外」のどちらから通学するかで金額が代わります。また、「最高月額」と「最高月額以外」の二つの区分があり、家計の収入基準によってどちらを利用できるか決まります。「最高月額」を選択できるのは日本学生支援機構が定める収入の基準を満たした人のみです。
―第二種奨学金は?
第二種奨学金は2万~12万円(医学部等に進学した場合は最大16万円)から希望額1万円単位で決めます。
―他にも借りるタイプの奨学金はありますか?
「入学時特別増額貸与奨学金」として、入学時の1回に限り10万円~50万円を借りられる場合があります。返済時には利子がつきます。
借りすぎには要注意
―第二種奨学金の利子はどのくらいですか?
利子は貸与終了時に決まります。「利子が定まらない恐ろしいローン」と感じる人もいるかと思いますが、法律で利子は借りた総額の3%以上にはしないことになっています。金利上昇傾向にある近年でも約1%に落ち着いており、2025年3月に卒業したかたの場合だと利率固定方式で1.641%です。
―借りる金額を決めるときの注意点を教えてください。
第二種奨学金の最高額・月12万円を4年間借り続けると、貸与額だけで500万円を超えます。第二種奨学金は利子も発生するため借りすぎには十分注意してください。
―第二種奨学金はいくら借りる人が多いのでしょうか?
日本学生支援機構が2023年に発表したデータによると、22年3月に貸与が終了した大学卒業生の平均貸与総額は337万円でした。
―少なめにした方がよいということでしょうか?
貸与額はいつでも下げられます。なので、どのくらいお金が必要なのか、感覚がつかめるまでは「気持ち多め」の奨学金を利用するのもありだと思います。
大学の種類によって金額が変わる
―給付型奨学金は月にいくらもらえますか?
月額7300円から7万5800円の範囲です。世帯収入がいくらか、進学する大学が私立か国公立か、通学は自宅からするか自宅外からするかによって変わります。
25年度から支援拡大
―今年度から新設された制度について教えてください。
今年度より「扶養する子どもの数が3人以上」いる「多子世帯」は、収入に関わらず支援を受けられるようになりました。世帯の収入に応じて支援額は変わりますが、給付型奨学金がもらえたり、授業料が安くなったりします。
昨年度から始まった「私立理工農系に進学する」人に向けた奨学金も、引き続き申し込めます。この場合は給付型奨学金はもらえず、授業料のみ安くなります。
記事は2025年4月時点の情報に基づいています。詳しくはは日本学生支援機構の公式サイト(https://www.jasso.go.jp/)を参照してください。
久慈拓也さん
くじ・たくや ファイナンシャル・プランナー。全国各地で奨学金に関する相談会や講演を行う「まなびシード」所属