ロンドン五輪競泳女子200㍍バタフライで銅メダルを獲得した星奈津美さん(埼玉・春日部共栄卒、ミズノ)。高校時代に病魔に襲われたが、日本代表への強い思いと周囲の支えを力に乗り越えた。(田坂友暁)

高校1年の3月、体の調子がおかしいことに気付いた。「練習後に急に心拍数が上がるし、何日も疲れがとれない。階段を上るだけでも息切れがしました」。病院へ行くと「バセドウ病」と診断された。

甲状腺ホルモンが過剰分泌され、新陳代謝が活発になりすぎる病気のため、激しい運動は禁物。「水泳の練習はできないし、体育の授業も見学していました。でも病名と対処法が分かったらすっきりしたんです。早く治してプールに戻りたいなと思うようになった」。そう思えたのには、理由がある。「日本代表になる」という目標があったからだ。「だから泳げない日々が続いても、くじけることがなかったんだと思います」

泳げることに感謝

周りの人たちは、そんな星を支え続けた。コーチは負担の少ない水中ウオーキングやヨガを勧めてくれた。両親は常にそばにいて、心の支えになってくれた。「自分の目標や夢に向かって一生懸命に取り組めば、必ず助けてくれる人がいる。支えてくれる人や、泳げることへの感謝の気持ちを忘れずに練習したことで、苦しい時を乗り越えることができました」

こうして少しずつ体調が回復し、再び泳げるようになった。「泳ぎたくても泳げなかった日々を思うと、普通に練習できることのありがたみを実感しました」 高校3年時には目標だった日本代表になり北京五輪に出場。10位になった。

現在も定期的に検診を受け、投薬治療を続ける。リオデジャネイロ五輪でさらなる高みを目指す。