世界でクールなイメージとして受け入れられるようになってきた日本の「オタク文化」。Tokyo Otaku Mode(トーキョーオタクモード、TOM)は「オタク文化」をフェイスブックやウェブサイトで世界に向けて発信し、商品販売などのサービスを展開する企業だ。(山口佳子)
フェイスブックのファン1800万人
TOMのフェイスブックページには、アニメやゲームなどのいわゆる「オタク文化」に関する最新情報、ぬいぐるみや原宿系ファッションの写真からキャラ弁の作り方まで「かわいい系」の情報が日々、英語でアップされている。
「いいね!」を押したファンの99%以上は海外の人々で、北米やアジア、ヨーロッパなど世界各地からコメントが寄せられる。現在のファン数は1800万人以上。日本人が運営するフェイスブックページで最大級の規模を誇る。「海外で『Otaku』とは、より広義な日本っぽいポップカルチャー全体を指しているようです」と広報担当の井澤梓さんは説明する。
ネットショップを展開
TOMがフェイスブックページを立ち上げたのは2011年。創業メンバーは当時、世界中で利用者数が伸びており、情報を拡散しやすい仕組みを備えたフェイスブックを、世界に日本をアピールするツールとして利用しようとしていた。コンテンツとして選んだのが「オタク文化」。日々、ニュース素材が生まれるアニメやゲームは、フェイスブックの更新を重ねやすく、ファンを広げられると考えた。
13年にはウェブサイトにネットショップを開設した。オタク文化は、違法サイトや海賊版の販売など「ニセモノ」が横行しがちだ。「本物」を届けたいという思いから、版権元から許諾を得た正規品だけを販売することにこだわっている。
クールな「Otaku」を逆輸入したい
升井優さん(24歳)(マーケティングスペシャリスト)
マーケティングを担当する升井優さんの主な仕事は、TOMで扱う商品や情報をより魅力的にアピールすること。具体的には、メルマガやフェイスブックでの情報発信、ネットショップでの販売企画、海外メディアへの広告出稿の調整などを行っている。
フェイスブックから発信した情報でユーザーの関心を引き、ネットショップで関連商品を購入するよう誘導する。「フェイスブックで商品の紹介ばかりすると、ファンが敬遠してしまうこともあるので、キャラ弁など(売り上げに直結しない)日本の文化や流行の情報も多く発信するようにしています」
時には海外から「こんなに人気があるのになぜ扱わないの?」という問い合わせが来ることも。「海外のお客さまに(人気商品などを)教えてもらう日々です」
8月末には海外メディアとの打ち合わせにあわせ、ニューヨークで開催された日本のポップカルチャーフェスティバルも視察。現地のファンから、アニメなどに関することで直接声を掛けられることも多かった。「『オタク文化』は世界共通言語だと実感しています」と升井さん。
「海外では、『オタク』という言葉は、一つのことに熱中している『かっこいい=クールな状態』と捉えられているようです。そんな『オタク』のかっこよさを日本に逆輸入できたらいいですね」
クールジャパン 海外で人気を得ている日本独自の文化。元来は、アニメやゲームなど東京・秋葉原に代表されるオタク文化や原宿のファッションなどのポップカルチャー(大衆文化)を指していたが、現在は、食材や伝統芸能、家電など広範囲にわたる日本文化を指す。国も海外の需要開拓を推進しており、10年に経済産業省が「クール・ジャパン室」を開設、13年には企業の資金調達を援助する官民共同の「クールジャパン機構」を設立した。TOMも出資を受ける。 |
企業データ |
Tokyo Otaku Mode Inc. |
2011年、ネット広告大手に勤務していた亀井智英氏が中心となり、オタク情報を紹介するフェイスブックページとしてスタート。翌年、創業。米カリフォルニア州の本社と千葉県浦安市(従業員各約10人)に配送センターを持つ。東京の表参道オフィスでは、マーケティングや開発エンジニア、翻訳、商品管理などの業務に携わる人が働いている(従業員約80人)。求める人材は「どんなことでも、一つのことに熱中できる人」(広報・井澤さん)。 |