READYFORチーフキュレーターの田島沙也加さん

クラウドファンディングとは、自分のやりたいことをインターネット上でプレゼンテーションして、不特定多数の人から資金を募る仕組みだ。日本初のクラウドファンディング・サービス企業、READYFOR株式会社で資金調達に挑戦する人をサポートする田島沙也加さんに話を聞いた。
(文・写真 山口佳子)

期限内に資金を調達

「エクアドルに日本の花火を打ち上げたい」「閉鎖の危機にあるモンゴルの孤児院を存続させたい」……。READYFORのサイトのトップページには、タイトルと写真、支援総額などが記載されたさまざまな「夢」が並ぶ。各プロジェクトには文章と写真を交えたページがあり、共感した閲覧者が出資することで、決められた期間内に必要な資金を調達することを目指す。

実行者の情熱をネットでPR

田島さんが携わるキュレーターという仕事は、READYFORのサイトに、資金調達に挑戦する人(実行者)のプロジェクトページを作り、目標の資金額を調達できるようサポートする。

 田島さんは「より多くの人に共感を与えるページ作りが大切。実行者のプロジェクトに対する思いや情熱を引き出し、魅力的なページを作りあげることが大切です」と説明する。

 サイト上でのページ公開後も、キュレーターは実行者のサポートを続ける。日々の達成度が数字に表れるため、一喜一憂する実行者もいるという。「『一緒に頑張りましょう』と応援したつもりが、かえって負担を感じさせたこともあり、実行者の気持ちに寄り添うことは本当に難しい。コミュニケーションの取り方も日々勉強です」(田島さん)

田島さんが1300万円以上の資金集めを支えた「日本初の実用乗用四輪駆動車『くろがね四起』の復元計画」の紹介サイト

要望に寄り添い目標達成

田島さんがREADYFORに出会ったのは、漠然と「人のためになることを仕事にしたい」と思い悩みながら就活を始めた大学3年生のころ。たまたま出掛けたイベントで、現在のREADYFORの代表・米良はるか氏に出会った。「ダイレクトに人を応援する仕事があることを知り、とても新鮮でした」(田島さん)。やがてREADYFORの学生インターンとなった。

 卒業後に入社し、キュレーターとしての経験が4年目になる田島さん。昨年担当した「日本初の実用乗用四輪駆動車『くろがね四起』の復元計画」というプロジェクトでは、目標額1000万円に対し、1300万円以上の資金を調達することに成功した。

 このプロジェクトでは、実際の車を展示するイベントを開きたいという実行者からの提案もあった。田島さんは「イベントの意義を確認し、情報発信したり当日のイベントに参加するなど、プロジェクトを全力でサポートしました」と振り返る。

 「マスコミでは取り上げられないことでも、READYFORできちんと紹介することで資金が集まり、社会をよくすることにつながると実感できます。日々やりがいを感じています」(田島さん)


クラウドファンディング
 群衆(Crowd)と資金調達(Funding)を組み合わせた造語。インターネット上を通じて不特定多数の人から資金を集める仕組み。金銭的な見返りのない「寄付型」のほか、プロジェクトが提供する何らかの権利や物品を購入する「購入型」がある。日本では購入型のサービスを展開する企業が多い。

 
 

企業データ 
READYFOR株式会社
 「誰もがやりたいことを実現できる世の中に」を理念に掲げ、2011年3月、東京大学発ベンチャー企業、オーマ㈱の事業の一つとして、日本初のクラウドファンディング「READYFOR」のサービスをスタート。14年11月オーマ㈱から独立。15年12月1日現在、従業員35人、従業員の平均年齢26歳。資金の合計調達額18億円(国内最大)、1プロジェクトの最大調達額3600万円、マーケットシェア率40%(国内1位)。