部員が製作、各地で乗車会

 京都・田辺高校鉄道研究部は1963年、開校と同時に創部された。当時は、鉄道模型のジオラマ制作や時刻表を駆使した鉄道旅行などが主な活動だったが、97年にミニ鉄道の乗車会を初めて開催してからは、その運行が活動の中心になった。運行の依頼も増え、現在は地元の植物園や公園などの催し、大学の学園祭などで年間10回以上の乗車会を開いている。

 ミニ鉄道は初乗車会の前年に完成した。原型はその前に製作したバッテリーで走る直流モーターの電気機関車。だが、バッテリー駆動では走行時間が短く、直線レールの行き来しかできなかったため、部員たちはエンジン発動機を利用したミニ機関車の製作に着手。そしてエンジン発動機と交流モーターを合わせた現行車両になった。

昨年秋の益城町での乗車会。エンブレムを「阿蘇」に変更して運行(学校提供、下の写真も)

 

「安全第一」点検怠らず

 運行のテーマは「今も昔も安全第一」(顧問の安達欽哉先生)。日頃からエンジン発動機や車輪の点検など、こまめなメンテナンスを怠らない。約20年たった今も安定運行を続けられている一つの要因だ。副部長の萬ゆる木ぎ颯は

や人と君(2年)は「乗車会では車両関係の安全確認だけではなく、部員と連携したり、乗客に注意を促すなどいろいろとやることがある」と話す。ミニ鉄道を通して社会と関わるのが最大の目的である。

熊本での乗車会の後には熊本りんどうロータリークラブの人たちから地震の体験談を聞いた

 

熊本で家族連れら乗せる

 ミニ鉄道は学校近隣だけではなく、被災地でも2度走っている。最初は2015年10月に東日本大震災の復興を祈念して福島で運行した。そして昨年秋には、熊本地震の被害の大きかった熊本県益城町へ行き、家族連れを中心に2日間で543人を乗せた。副部長の入江琢磨君(2年)は「熊本の方々を少しでも元気づけたかったので、多くの笑顔が届けられて良かった」と振り返る。

 熊本では乗車会の合間に被災地を巡り、被災者から体験談も聞いた。西村翔太君(2年)は「益城町の被害の大きさを肌で感じた。少しでも復興の力になりたいと思った」と話す。(白井邦彦)

春秋の年2回、京都府立城山総合運動競技場で行うミニ鉄道乗車会(白井撮影)

部活データ

 1963年創部。部員14人(3年生1人、2年生6人、1年生7人)。工業系の学科だ

けでなく普通科の部員もいる。昨年は大阪のイベントでもミニ鉄道を走らせた。多い日には1日700人以上の乗客を笑顔にする。