2024年度入試での国公立大学の志望動向を河合塾教育研究開発本部で主席研究員を務める近藤治さんに聞いた。模試では、一部の難関国立大学の人気の高まりが目立ったという。(西健太郎)
受験生減少の中で国公立大の志願度高まる
河合塾が11月に実施した共通テスト摸試(第3回全統共通テスト摸試)受験者の志望動向をみると、国公立大学志望者数は前年とほぼ同数。2024年度入試は前年より18歳人口が約3万4千人減り、大学志願者の減少が見込まれることを考えると「国公立大学の志願度はむしろ高まっている」(河合塾の近藤さん)といえる状況だ。大学の難易度や文系・理系によらず同程度の志願者数を保っているという。
新課程前年でも「安全志向」みられず
高校教育を新課程で受けた現高校2年生が受ける2025年度入試からは大学入学共通テストの出題科目や出題方式も一部変更される。これまで入試制度が変更される前年は浪人を避ける意識がより高まる「安全志向」になりがちだが、現3年生についてはその傾向はみられず、強気ともいえる志望動向だ。「大学入試センターが浪人生向けの経過措置として出題方法の配慮や得点調整の実施を発表しました。現3年生は極端な安全志向にならずに今年の入試にチャレンジできるようになっている可能性はあります」と近藤さん。
東北大、東工大、一橋大の人気上昇か
一方、共通テスト模試受験者の大学ごとの志望者数をみると、難関大学の中でも東北大学、東京工業大学、一橋大学の増加が目立つ。
東工大の人気について近藤さんは「女子の志望者がかなり増えている」と指摘する。東工大は24年度入試から学校推薦型選抜と総合型選抜で「女子枠」を導入する。一般選抜では導入しないが「東工大は女子学生の入学を望んでいる」というメッセージが女子受験生に伝わり、志望者の増加につながっているという。
東北大は昨年、世界トップレベルの研究水準をめざして国が指定する「国際卓越研究大学」の候補に唯一選ばれたことが影響しているという。「東北大が候補になっているという報道がされた夏から秋にかけて志望者が増えました」(近藤さん)
一橋大は、経済学部の志望者の増加が目立つ。「全国的に経済学部の人気が高まっています。社会科学系の大学の代表格である一橋大に特に志望者が集まっているとみることができます」(近藤さん)
北海道大、九州大は志望者減少傾向
一方、北海道大学や九州大学は志望者が減っている。「地方の人口減が影響している可能性がある」と近藤さん。大阪大学の志望者が減っているのは、京都大学に志望者が流れている可能性が考えられる。東京大学の志望者はやや減っているが、難易度への影響はなさそうだという。
近藤治さん 学校法人河合塾 教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。情報発信や講演も多数実施。