2024年度の大学入試ではどんな学部・学科の人気が上昇しているのか。河合塾教育研究開発本部で主席研究員を務める近藤治さんに聞いた。女子の志望動向に大きな変化がみられるのが特徴という。(西健太郎)
経済・法・理・農・医・歯など増加
河合塾が11月に実施した共通テスト摸試(第3回全統共通テスト摸試)受験者の志望動向をみると、国公立大学志望者数は前年とほぼ同数。志望者が増えた分野は、文系では経済、商・会計など、理系では理、応用化学、生物工・生命工、農、医、歯などの系統の学部学科だ。逆に減ったのは、地域・国際、生活科学、通信・情報、薬だった。
女子が「社会に出て活躍できるか」重視
人気を左右する要因の一つが女子の志望動向だ。法律系を志望する女子は前年比108%、経済は107%、建築は108%、応用化学系は111%、生物工・生命工は118%に上った。河合塾の近藤さんは近年の傾向として「キャリアの可能性を広げたい」という女子の意識の高まりを指摘する。「社会に出て活躍できそうな実学系の学部学科の志望度が高まっています」
私立大学の志望者の動向をみても、同様に「実学志向」の傾向がみてとれる。私立大学全体の志望者数は前年の95%だったが、法律、経済・経営・商、理、機械・航空、生物工・生命工、獣医、医、歯などの学部学科は、私立大学の平均を上回った。
文・生活科学は志望者減少、女子大学には意義も
一方で、国公立大学、私立大学とも、文・人文、生活科学などは志望者が減少している。近藤さんはここにも女子の志望の変化を指摘する。「これらの分野はこれまで女子が中心に志望してきました。女子のキャリア志向の変化の影響を受けて、減少しているといえます」。近年、女子大学の志望者の減少も指摘されるが、近藤さんは「女子大学は、文、生活科学の分野が中心なので、女子の志望の変化の影響を受けやすい。一方で、学部の改組や新設によって中身を変えている女子大学もあります。別学の環境の中でリーダーシップや積極性を引き出すという女子大学の意義はあると思います」とも話す。
コロナ禍で減らした国際系は増加に転じる
コロナ禍で志望者を大きく減らした国際系の学部・学科は「下げ止まり、増加に転じつつある」(近藤さん)という。「留学や、来日した海外の方との直接の交流ができるようになったことが影響しています」。ただ、女子の志望者が従来多かった外国語系は減少が続いているという。
近藤治さん 学校法人河合塾 教育研究開発本部主席研究員。河合塾入塾後、教育情報分析部門で大学入試動向分析や進学情報誌の編集に携わる。教育情報部部長、中部本部長などを経て、2021年4月から現職。情報発信や講演も多数実施。