滋賀・彦根東高校新聞部は、今年夏の全国高校総合文化祭新聞部門で7年連続8回目の最優秀賞を受賞した。年10回の学校新聞のほか、速報新聞を年150号以上も発行する。部員たちは取材や製作の場数を踏むことで、高い技術を身に付けている。
(文・写真 白井邦彦)

創刊66年、多彩な企画

今年10月発行の「彦根東高校新聞」は創刊から443号目。66年続く伝統ある学校新聞(タブロイド判約20ページ)で、年10回発行される。内容は、部活紹介や地域の話題、現代の親子関係を考える社会派記事など多彩だ。
 2011年からは「福島をつなぐ」と題した被災地リポートも年1回掲載している。部長の松田拓磨君(2年)は「今年の夏は福島に2日間滞在し、約10人に話を聞きました。表面的には復興が進んでいたけれど、人々の内面には悩みやあつれきが残っていると感じました」と言う。
 現場へ行き、実際に見て、相手の話を聞いて、感じたことを読者に伝える。新聞作りの基本に忠実なのが同部の特徴である。

速報は年150号以上

部では学校新聞とは別に、速報新聞「キマグレ」(タブロイド判1ページ)も年150号以上発行している。野球部が夏の甲子園に初出場した昨年は年190号以上に。当然、記事の掛け持ちも多く、取材当日も3つの速報新聞の製作に追われていた。
 部室の中は、さぞかし殺伐とした空気だろうと予想していたが、意外にもワイワイ、ガヤガヤとした雰囲気。号外の締め切り時間と格闘中だった福井北斗君(1年)は「いつもこんな感じ。慣れました」と笑う。1年生も、企画から校正までの一連の作業に携わり、半年ほどで一人前に。成長が早いのは、先輩の手ほどきもあるが、発行回数の多い速報新聞で場数を踏めるのが大きな要因だ。
 基本を身に付けた上で、得意分野を伸ばす。熊谷詠奈(うたな)さん(2年)は「多くの経験の中で、自分は速報を作るタイプではないと分かった。今のこだわりは見やすい紙面。デザインがまとまっていると言われるとうれしい」と話す。

先輩から取材のノウハウを学ぶ(顧問・鈴木真由美先生)
文字校正を部員全員で行うなど、紙面に間違いがないことを心掛けています。それ以外は、部員たちが企画や構成を考え、各自が取材や執筆を行っていきます。発行後は反省会を開き、部員同士が良い点も悪い点も指摘し合い、次の号に生かしていきます。取材や執筆、撮影などのノウハウは、細かい部分まで先輩が後輩に教えます。部員は、1年生から速報新聞の製作などを通して場慣れしていきます。部員の雰囲気は、うるさいぐらい明るいです(笑)。
取材では礼儀を重んじる(部長・松田拓磨君)
 部は先輩・後輩の上下関係がなく、みんなが意見を言える雰囲気があります。紙面作りでは、先輩が作った紙面を参考にしますが、マンネリ化しないように同じネタでも視点や切り口を変えるように心掛けています。取材では、相手を不快にさせないことも大切ですので、礼儀には気を付けています。

 

部活データ

彦根東高校新聞の創刊は1948年。部員44人(3年生14人、2年生10人、1年生20人)。全国高校総合文化祭新聞部門の最優秀賞8回、全国高校新聞コンクール文部科学大臣奨励賞3回。部訓は「やりたいことは何でもやる」。平日は主に部室で記事作成や写真整理、土日は校内外で取材。年中ほぼ休みなし。