全国大会常連の強豪校として知られる崇徳高校(広島)新聞部は、「G7広島サミット」(5月19日~21日)の総力取材を敢行。G7の最前線を目の当たりにし、地元で暮らす高校生たちはG7で何を感じたのか、3年生部員に聞いた。(文・中田宗孝、写真・学校提供)

部員200人超え、頼れる部長が統括

タブロイド版の本紙「崇徳学園新聞」を学期ごとに年3回発行、週2~3回のペースで校内に掲示する速報版の制作に励む。今年度は部員が200人を超えた。「先輩後輩の仲が良くて、部の雰囲気もすごくラフ」(部長の川畑悠成さん・3年)

部長の川畑さん(後列右)ら3年生部員たち

川畑さんが「仕事をこなす量には自信がある。人の200倍は活動しようと心掛けています」と話すと、すかさず「いや、他の部員の400倍は働いてるよ」と坂田勇太さん(3年)が言葉を挟む。「(川畑部長は)取材も撮影も基本何でもできる。底知れない体力もあって常にエネルギッシュ。新聞づくりに懸ける思いも伝わってきて、何かと頼れる存在ですね」

校内に掲示される速報版(B4片面)

特別編成班でG7取材に挑む

「『G7広島サミット』を取材したい!」という声は部員の中から上がった。部は、学校行事や部活の大会結果といった校内の出来事はもちろん、「地元・広島の今」を伝える新聞づくりが特色だ。これまでも広島カープの優勝やローマ教皇の広島訪問を最前線で取材し、その模様を紙面に掲載してきた。

サミット記者会見の登壇者に質問を投げかける坂田さん

部員たちは「Road to G7」を掲げ、昨年10月からサミットに関連する催し、警備にあたる広島県警や消防局などを精力的に取材。来日する海外メディアへの取材時に自分たちの活動を紹介するため、これまで発行した速報版80部の英訳作業にも着手した。

そして2月、約60人の部員からなる「G7広島サミット取材特別編成班」を結成。班の代表には、国際問題の記事を多く担当してきた坂田さんが立候補して就いた。

イタリア首相のオフショットを撮影

広島市内のレンタル会議室にG7広島サミットの取材本部を設けた。3~4人の班に分かれて、街頭インタビューで市民の声を聞き、メディア向けの記者会見に参加。「人権、環境、ジェンダー、どのトピックに注目してますか?」と、外国人記者に英語でインタビューした。

外国人記者に英語でインタビューする部員たち。英訳した部の新聞も紹介できた

撮影班は各国首脳が乗車する車列を追った。サミット開幕前日、川畑さんはイタリアのメローニ首相の貴重なオフショットの撮影に成功。このスクープ写真は複数のテレビ番組に提供し、報道された。

川畑さんが撮影したイタリアのメローニ首相のオフショット

被爆者の失望、間近に触れて

サミット最終日には、核兵器の廃絶を長きにわたり訴え続ける被爆者のサーロー節子さんと交流する機会にめぐまれた。「大きな失敗だった」とサミットへの失望感を語った会見終了後、サーローさんの車いすの運搬を偶然近くにいた坂田さんが手伝った。「そのときに『頑張ってください』と自分に掛けていただいた、その一言がとても重く感じました」

来日したカナダ在住の被爆者・サーロー節子さんとわずかな時間だが言葉を交わした

サミットの取材に連日奔走した山村菜々花さん(3年)は、閉幕後に、日の落ちた広島平和記念公園に立ち寄った。G7の首脳やウクライナのゼレンスキー大統領が原爆死没者慰霊碑に献花を手向けた場所だ。山村さんは、「慣れ親しんだ公園はいつもと違う感じがしました……」と、言葉少なに語った。

サミット関連の記事を掲載した「崇徳学園新聞」

G7広島サミットの取材の成果は、B4版の「特集号」(全16面予定)として発行するという。現在、紙面を鋭意制作中だ。

崇徳高校新聞部

1949年創部。部員206人(3年120人、2年43人、1年43人)。他の部活と兼部する生徒もいる。2022年、優れた学校新聞に与えられる「全国高校新聞年間紙面審査賞」最優秀賞(全国1位タイ相当)を受賞。今夏、文化部の祭典「全国高等学校総合文化祭(2023かごしま総文)」の新聞部門に10年連続10回目の出場を果たす。