BGMの使用や演劇の上演、看板や出し物でのキャラクターの使用など、文化祭では著作権への配慮が必要とされる場面が多い。高校生が知っておきたい著作権の基礎知識について、学校著作権ナビゲーターの原口直さんに聞いた。(安永美穂)
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この記事のポイント
・著作権とは「作品は作った人のものである」ことを示す権利
・学校の「授業内」利用だったら原則許諾不要
・ウェブサイトやSNSへのアップは注意が必要
作品は「作った人のもの」である
―著作権とはそもそも何ですか?
一言で言うと、「作品は作った人のものである」ことを示す権利のことです。著作権は知的財産権の中の一つで、著作権法により規定されています。言語、音楽、舞踊、美術、建築、地図、映画、写真、プログラム、二次著作物、編集著作物、データベースなど、さまざまな著作物に関して発生します。
―著作権は誰が持っているのですか。
著作権は、それぞれの著作物を生み出した人に、生み出した瞬間に発生します。先ほど述べたように「作品は作った人のもの」というのが著作権のルールであり、著作物を使う・増やす・変えるにあたっては、作った人(著作権者)の許諾が必要です。
学校の「授業」は許諾なしでOK
―どんな場合でも著作権者に許諾が必要ですか?
いくつかの例外があり、そのうちの一つが「学校の授業内での利用」です。つまり、学校の「授業」においては、無許諾かつ無償で著作物を使用することが例外的に認められています。ここでいう「授業」とは、先生と生徒の間でやり取りが行われる活動を指します。教科の授業のほかに、学級活動、クラブ活動・部活動、生徒会活動、学校行事などが含まれます。
オンライン授業やオンライン文化祭などといった行事の配信は「授業」には含まれず、本来であれば著作権者の許諾や使用料の支払いが必要でした。しかし、それでは利用の際の教員負担が大きいということで、著作権法が改正されました。今は「授業目的公衆送信補償金制度」により、SARTRAS(一般社団法人授業目的公衆送信補償金等管理協会)に補償金を支払えば、許諾不要で著作物を使用できます。
ウェブサイトやSNSへの掲載は要注意
―注意すべき点は?
無許諾かつ無償で著作物を使用することが認められるのは、あくまでも「授業内での利用」だけ。学校のホームページや学校だより・広報誌などへの掲載、個人のブログやSNS等へのアップロードは、授業内での活動とは見なされないため、著作権者による許諾が必要です。
学校の授業における著作権のルールは、あくまでも例外です。無許諾かつ無償での著作物の使用を授業以外の場面でしてしまうと、違法になるおそれがあるため注意してください。
著作権について知りたいときに役立つサイト
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音楽 JASRAC
「JASRAC PARK」内の「学校で音楽を使うときには」では、学校行事ごとにどのようなときに手続きが必要なのかが解説されている。
オンライン配信 SARTRAS
自分が通っている高校が授業目的公衆送信補償金の支払い申請をしているかどうかを検索できる。
著作権全般 文化庁
「著作権Q&A」では、カテゴリ別に著作権制度の基本的な考え方について知ることができる。
子どもや教員からの質問に対する回答も多数掲載されている。
学校著作権ナビゲーター、東京学芸大こども未来研究所教育支援フェロー。学校の著作権について解説するウェブサイト「原口直の学校著作権ナビ」(https://maruc.work/)、「原口直の一歩先ゆく音楽教育」(https://makiba.work/)を運営。学校を訪問しての出前授業や教員研修も実施している。