重量挙げ女子45キロ級で、1年次から数々の大会記録を塗り替え続ける平塚麗桜(山梨・日川2年)。インターハイでも、優勝候補の一角として「頂」に挑む。(文・中田宗孝、写真・学校提供)

大会記録を次々更新

6月に出場した関東大会では、昨年に続き優勝を飾った。同階級の大会新記録も樹立し、8月のインターハイ初出場に向けて好調な仕上がりぶりを見せた。

5月の山梨県高校総体で試技中の平塚。今大会でも女子45キロ級で大会新をマーク

重量挙げを始めたのは、ソフトボール部を引退した中学3年生のとき。当時、日川高校ウエイトリフティング部員だった3歳年上の兄からの「やってみる?」との誘いに応じた。

「部の体験練習で、すぐにバーベルを挙げられて『やれるな』という手応えを感じたんです。顧問の先生や先輩たちからたくさん褒められたこともうれしくて」。入部後は、1年次から次々と大会記録を更新して一躍、全国区の選手へと駆け上がった。

強みは脚力、筋トレで磨く

重量挙げ選手としての強みは「脚力」だと自己分析。脚力をより磨くために、下半身はもちろん、肩や背中、体のさまざまな部位を鍛える筋力トレーニングに週5で励んでいる。自己ベストの数値に近い重量のバーベルを何回も挙げることで、「試技本番で『成功できる!』という気持ちになるよう自信につなげているんです」。全身鏡でバーベルを挙げる自分の姿を見て、「足の方向は正しいかなど、フォームの細かな調整にも取り組んでいます」。

大切なのは部の「雰囲気づくり」

自らを追い込むハードな練習と同じくらい平塚は「練習に楽しく打ち込める部の雰囲気づくりが大事」だと話す。「自分から積極的に声を出して盛り上げる。キツい時こそ笑顔でいる。特に1年生部員には部活が楽しいと思ってもらいたい」

同部は、平塚はじめ全国クラスの選手がそろい、過去にはオリンピック出場者も輩出した強豪だ。「自分の練習に取り組みながらも後輩に優しく教えてくれたり、声を掛けてくれたりする先輩たちがカッコ良かったんです。その姿勢に刺激を受けますし、私も後輩に対してそんな先輩でありたい」

普段の練習中の良い雰囲気は、強さにつながる。「試技は一人。だけど、チーム力を感じられるのもこの競技の魅力なんです」

本番での勝負強さを持つ

1年生のときの主な成績を挙げると、大会新記録で山梨県高校総体優勝、大会新記録で関東大会優勝、そして3月の全国高校選抜大会では準優勝を果たした。華々しい結果を残してきたが、「大会直前の練習では、普段ならできる重量が挙げられなくって、やる気と体がうまくかみ合わないことのほうが多かった」と明かす。だが大会になると「できる」、そんな本番での勝負強さも彼女の長所の一つだ。「適度な緊張感と負けず嫌いな性格がいい感じにマッチするのか、大会ではしっかりできるんです」とほほ笑む。

文化祭を満喫中。学校生活も充実した日々を過ごす

現在の自己ベスト記録は「スナッチ」58キロ、「クリーン&ジャーク」77キロ。スナッチとは、バーベルを頭上まで一気に持って立ち上がる種目で、クリーン&ジャークは、バーベルを肩まで持ち挙げてから頭上まで挙げる種目のこと。重量挙げは、この2種目を各3回ずつ行い、それぞれのベストの重量(最高記録を採用)を足した合計で順位が決まる。

平塚の2種目のベスト記録の合計は「135キロ」で、単純に数値のみで比較すれば、昨年のインターハイ女子45キロ級の優勝記録を上回る。つまり同級の日本一を狙える位置にいる。「インターハイでは、自分の一番いい試技をしたい。1位がとれるように頑張ります」と意気込む。

「いけるぞ!」声援を支えに

「私の場合は、バーベルを挙げているときも応援の声がずっと聞こえています」

重量挙げの会場では、多くの観客が試技中の選手に声援を送る。平塚も応援の声を力に変えているという。「いつも練習で聞こえてくる部員たちの『いけるぞ!』『できるぞ!』の声はやっぱり心強い。私のことを知らない観客の方々の応援も耳に届いています」

自己ベストの記録は昨年のインターハイ優勝記録を上回る

そして大事な試技のときには、部のOBでもある兄が必ずセコンドに付くそう。「試合前は気持ちをほぐす意味でもいっぱいしゃべりたいので、兄が話し相手になってくれます。競技の会話は少なくて、『終わったら遊びに行こう』とか(笑)」

重量挙げはチーム力だと語った平塚。仲間や家族から掛けられる言葉を胸に、昨日の自分を越えていく。

ひらつか・りお 

2007年2月5日、山梨県生まれ。甲州市立塩山中卒。 4月、大学生の選手も参加した「全日本選手権大会」で6位入賞。141㌢。