2012年の全国高校総体(インターハイ)重量挙げ・学校対抗を制した明石北(兵庫)ウェイトリフティング部。「高校6冠」を狙う選手から、運動部経験のない部員まで個性豊かな顔触れがそろう。練習場には100㌔前後のバーベルに、一心に立ち向かう部員たちの姿があった。 (文・写真 中尾義理)

創部42年目を迎え、卒業生には五輪メダリストもいる伝統校だ。大半の部員が高校から重量挙げを始めた。入部当初は20㌔のシャフト(棒)を挙げるのにてこずった部員が、2年後にはクリーン&ジャーク(一度肩まで上げ、そこから頭上へ持ち上げる種目)で100㌔を挙げることも珍しくない。

ただしパワーだけでは通用しない。重量挙げの動作には、瞬発力、集中力、バランス感覚など多くの要素が必要だ。

主将の竹内健人(3年)=兵庫・岩岡中出身=は「強い選手を見て、『どうすればあんなに重いバーベルを挙げられるのか』を考えるのが面白い」と話す。個人でインターハイ出場を狙いながら、「昨年のチームに近づけるよう、明るく団結したチームにしたい」と意気込む。

部には「体育の授業は苦手」「運動経験ゼロ」という部員もいれば、昨年62㌔級で高校3冠(全国高校選抜大会、インターハイ、国体)を達成した生おお頼らい永人(3年)=同・野々池中出身=のような逸材もいる。

スナッチ(頭上へ一気に持ち上げる種目)117㌔、クリーン&ジャーク146㌔の記録を持つ生頼は、3月の全国高校選抜大会69㌔級でトータル260㌔を挙げ大会新で優勝した。「弱い上半身を強くして、また高校3冠を目指します」(生頼)。実現すれば高校6冠の偉業となる。

生頼俊秀監督(49)は「以前は、一から十まで細かく練習の指示を出していたが、今は各自に任せている」と話す。自分の課題と向き合う「考える練習」が、部の成長の源泉だ。

部は今年、練習場の床を新装した。新しい床の下には、40年前から部を支えてきた古い床板を残した。

部員たちは練習後、モップを掛け、シャフトに着いた滑り止めを丁寧に拭き取る。伝統と練習環境への思いが「1㌔でも重く」のチャレンジ精神を生んでいる。

【TEAM DATA】
1972年創部、部員12人(3年生6人、2年生4人、マネジャー2人=取材時)。73年インターハイ学校対抗準優勝、09年3位、12年優勝。OBに小高正宏(84年ロス五輪56㌔級銅メダリスト)がいる。