全国高校総合文化祭(とうきょう総文2022)の新聞部門に、8年連続8度目の出場を決めた静岡・韮山高校写真報道探究部。新聞制作以外にも、写真コンクールへの出品や、地域社会と連携した情報発信・企画協力を行う探求活動にも取り組む。(文・中田宗孝 写真・学校提供)

休日もカメラを持ち歩き

年3回発行の定期新聞「韮高新聞」、週1~2回のペースで発行する速報版「龍城学報」の2紙の制作に励む静岡・韮山高校写真報道探究部。部活中に撮影した写真をコンクールに出品する部員もおり、写真部のような活動ができるのも特色の一つだ。

「写真に力を入れている部員は、休日でも常にカメラを持ち歩き、旅行先の風景などの芸術的な一枚を撮影しています」(部長の小林檀君・2年)

全校生徒に配布するタブロイド版「韮高新聞」(写真奥)。学校行事や部活動の大会結果などを伝えるA4サイズの速報版「龍城学報」は、各クラスの教室に掲示する

文章が載った喜び忘れない

5月にあった文化祭・体育祭では、部員たちが準備で活気づく校内を取材してまわった。上級生部員は、1年生の新入部員にインタビューのやり方や、記事の書き方、紙面の作り方などを教えていく。

「僕自身、入部当初こそ新聞に地味なイメージを抱いていましたが、取材を経験するとその面白さが分かるんです。自分の書いた文章が初めて紙面に掲載されたときの感動もずっと覚えています」(小林君)

新聞づくりに取り組む写真報道探究部の部員たち

場の盛り上げ、会話の促し…取材は難しい!

5月まで部長を務めた勝又優輝君(3年)は、インタビュー取材の醍醐味を話す。「質問に答えてくださる方がたくさん喋ってくれると、インタビューする僕も嬉しい気持ちになります」

来年迎える創立150周年に向けた企画では、前校長に取材を敢行。「『昔の韮高はこうだった』と、色々な話題を語ってもらい、本当に話が面白くて、気がつけば1時間以上も取材していました」

楽しさだけでなく、インタビューの難しさを痛感する現場も経験した。「(複数人による)座談会形式の取材では、事前に用意した質問を投げかけるだけではなかなか上手くいきません。会話の流れにそった質問をしたり、話題を振って場を盛りあげたり。出席者同士に会話させることも意識して…とても難しいです」

「知りたい」に寄り添う姿勢大事に

勝又君は将来アナウンサー志望だ。「高校生のうちから報道に携わることができ、自分の今後に繋がりました。さまざまな取材を経験し、話す力、文章にまとめる力がついたと感じています」

部長の小林君(右)と前部長の勝又君

「生徒の『知りたい』に寄り添う」「部員の思いを紙面に反映する」を目標に、新聞づくりと日々向き合う。「編集会議の段階から、読み手である生徒にどれだけ寄り添った紙面にできるか考えています。面白いな、読み応えがあるなと思える新聞にしたい」(勝又君)

「色々な物事を高校生ならではの目線で捉え、考え、自分たちの思いも込めた新聞を目指しています。また、高校生が読んでも分かりやすい内容にすることも心掛けているんです」(小林君)

4月発行の「韮高新聞」見開きカラー刷りの特集は「18歳成人」。在校生の本音が垣間見える意識調査や、少年犯罪で子供を亡くした家族の声などを取りあげ、硬軟織り交ぜた紙面となった

心揺さぶり、行動のきっかけになる記事を

「韮高新聞」中面の見開きページでは「特集」を掲載する。高校生の関心が高い社会情勢や、学校がある伊豆の国市を中心とした地域の話題などの企画を毎号打ち出している。最新号では「4月より18歳から成人に 責任を持って社会参画を」と見出しに掲げ、民法改正のニュースをさまざまな視点から掘り下げた記事を発信した。

「18歳成人」特集をメインで担当した小林君は、記事執筆にあたり「客観的でありながらも、そうなりすぎない文章を意識した」と語る。

「取材を通じて感じた自分の気持ちを込めた記事になるように。今回の特集では、18歳を迎える高校生たちに大人としての自覚を持ってほしいと思いながら文章を執筆しました。読み手の心を揺さぶり、記事をきっかけに新たな行動に移してもらえるような文章を書くことを目標にしています」

全部員が紙面制作に携わり、多くの時間を費やす「韮高新聞」づくりは、部員たちの仲を深める機会でもある。「春休みや夏休み中の学校に集まって作業をするんですが、放課後の活動以上に部員同士のお喋りも学年関係なく弾んで。真剣に取り組みながらも、楽しい時間が過ぎていきます」(勝又君)

紙面で伊豆の国市の旬の話題を届ける。近号では、NHK大河ドラマ「鎌倉殿の13人」の舞台となった地元スポットなどを魅力的に紹介。同作で北条義時を演じる俳優の小栗旬さんへの対面取材も実現し、昨年12月発行号に掲載された

東京開催の全国大会「とうきょう総文」へ

今夏には、「とうきょう総文2022」新聞部門(三輪田学園中高、8月1日~3日)に出場する。

部は、新聞部門の最高賞にあたる「最優秀賞」を過去2度受賞した実績を持つ。勝又君は、「他校の新聞をたくさん見て、記事の書き方の特色、良いところ、参考になる部分を自分たちの新聞に生かして欲しいですね」と、参加する後輩部員らにエールを送る。

総文祭では、他校の新聞部員とともに東京各地を取材して紙面制作を行う「交流新聞」が実施される。同部では、交流新聞に1年生の参加が通例だ。「レベルの高い全国の新聞部員のみなさんから、『韮高新聞』にはない、新しい何かを吸収して欲しいです。僕も昨年度の『交流新聞』で、強豪校の部員の取材力、紙面づくりへの意欲を目のあたりにし、とても刺激を受けたんです」(小林君)

取材中の部員たち

部活データ

2015年創部。部員35人(3年生12人、2年生5人、1年生18人)。活動日は、校内パソコン室で毎週月~金曜。「全国高校新聞年間紙面審査」最優秀賞2回(2019、2021)。探究活動の一環として、伊豆の国市内の企業とコラボした商品開発、観光情報誌や「WEBメディア」への寄稿も行う