データネット実行委員会(ベネッセコーポレーション・駿台予備学校共催)による2021年度大学入学共通テストの「倫理」の問題分析は次の通り。
会話やレポートなどを素材に、現代の倫理的諸課題について深い考察が求められた
出題分野は第1問で源流思想、第4問で青年期と現代の諸課題が扱われた。形式は従来のリード文に加え、生徒の会話やレポートが増えるなどの変化があった。思想家の考え方の理解をもとに、現代の倫理的諸課題について考察する問題が多く、資料も多用された。取り組みやすい問題も多く、昨年センター試験よりやや易化。
大問数・解答数
大問数4は昨年のセンター試験と比べて変更なし。解答数は33個で昨年のセンター試験と比べて4個減少した。すべての大問で「倫理、政治・経済」との共通の設問が出題された。
出題形式
昨年のセンター試験と比べて、問題ページ数は1ページ増加。2から3のパートに分かれて出題される大問もみられた。文章選択問題が減少し、組合せ問題が増加した。昨年のセンター試験と比べて、図版や原典資料などが多く扱われた。
出題分野
特定の分野に偏ることなく幅広く出題され、第1問で源流思想分野、第2問で日本思想分野、第3問で西洋思想分野、第4問で青年期分野と現代の諸課題分野が現代の思想と合わせて出題された。
問題量
昨年センター試験並。
難易
昨年センター試験よりやや易化。
大問別分析
第1問「『恥』の観点から捉える源流思想」 (24点・解答数8)
源流思想分野からの出題。問4は上座部仏教の思想家の原典資料が用いられ、原典資料とそれを読んだ生徒の会話文を読み取る力が求められた。問5は規範や社会秩序について源流の4分野にわたってそれぞれ問われ、基本的な知識があれば解答できた。問6は荘子の資料から諸子百家の思想の相互関係や批判点を問うており、資料を正確に読み取ることが求められた。
第2問「日本における時間の捉え方と人生観・世界観」 (24点・解答数8)
日本思想分野から、各時代・分野にわたって幅広く問われた。問1は『古事記』における神の概念についての理解と、『神統記』の原典資料を読み取る力が求められた。問3は、基本的事項を問いながら道元の時間観念を学ぶという新たな視点からの出題であった。問8は図版を使わない芸術分野からの出題であり、高村光太郎の資料を正確に読み取ることで「芸術作品の永遠性」を理解できるかがポイントであった。
第3問「良心をめぐる西洋近現代思想の流れ」 (24点・解答数8)
西洋思想分野から、知識を求める設問と思考力を求める設問がバランスよく出題された。問1は、ルターの思想についてエリクソンが論じた文章の内容について問われたが、正誤のポイントは明確であった。問6は、フッサールの現象学とヘーゲルの精神現象学に関する正確な知識が求められた。問8は、良心をテーマに展開したリード文とそれに基づいた先生と生徒の会話文を読んだうえで、文意に沿う文章を選ぶ問題であった。
第4問「歴史の多様性とその捉え方」 (28点・解答数9)
青年期分野と現代の諸課題分野から出題され、現代の思想と絡めて幅広く問われており、会話文の内容をしっかり捉えることが必要であった。問1では、リオタールやヨナスなどの思想の特色をつかむとともに、用語を正確に理解することが問われた。問4では、問題のなかで説明された、問題焦点型対処というストレスを抱えた場合の対処方法について理解し、日常の生活に落とし込むことができたかどうかが問われた。
過去5年の平均点(大学入試センター公表値)
- 2020年度 65.37点
- 2019年度 62.25点
- 2018年度 67.78点
- 2017年度 54.66点
- 2016年度 51.84点